集団的自衛権をめぐる論議についてです。
アメリカから日本のこの状況をみると、どう映るのか。
日本ビジネスプレスでの私の連載コラムからの転載です。
原文へのリンクは以下です。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40679
国際激流と日本
「日本はモンスターなのか?」
集団的自衛権議論で表面化する“日本性悪説”日本を恐れているのは実は日本自身
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日本では憲法改正をめぐる論議でも同様の反応が顕著である。憲法9条を改正すると、日本は歯止めを失い、軍国主義に走り、他国への侵略を再開する、というような主張が堂々と述べられるのだ。しかも日本人自身によってである。
日本はそれほど危険な国なのか。それほど自制のない国なのか。こうした疑問が起きるのは当然だろう。
日本性悪説に疑問を呈したセルフ氏
そこで思い出されるのは、米国で開かれた日本の憲法改正に関するセミナーである。このセミナーにおける米国やイギリスの学者たちの意見の中に、まさにこの日本の特異性への面白い考察があった。
2011年9月、ワシントンの「ウッドロー・ウィルソン国際学術センター」で「65年目の日本の“平和”憲法=変化の時か」と題されたセミナーが 開かれた。パネリストは日本の政治や法律、あるいは憲法一般を専門とするアメリカ人とイギリス人の学者4人だった。聴衆側にも専門家がいて、討論に加わっ た。
パネリストたちがみな意見を一致させたのは、日本憲法9条の「国権の発動としての戦争の禁止」「戦力の不保持」「交戦権の禁止」などという規定 が、全世界の各国の憲法の中で極めて異端だという点だった。集団的自衛権の行使の禁止も、この9条の規定を根拠としている。こうした日本の憲法に対し、 「もうそろそろ改正の時期だ」という意見も出た。
だが、その一方で「日本の軍国主義志向を考えると、憲法9条は今後もずっと必要だろう」という主張も表明された。「今の日本は、古代ギリシャの猛 将ユリシーズが柱に縛られた状態と言えるだろう」という声も出た。ギリシャ神話のユリシーズはオデュッセウスの別名で、世界を回り、異なる相手を次々に打 倒した戦いの名人だった。日本もそんな戦いの名人だから、常に縛っておかねばならない、というわけだ。
その背後にあるのは、“日本性悪説”である。日本は国家も民族も潜在的、先天的に危険な軍事志向が強く、自衛のための軍事力も必ず侵略目的にそれを使うようになる、というような一方的な断定である。
(つづく)