2014年06月

 慰安婦問題について一文を書きました。

 

 Japan In-Depth の「古森義久の内外透視」というコラムです。

 

 

 

[古森義久]<慰安婦問題>河野談話と朝日新聞の罪〜なぜ事実ではない「強制連行」が世界中で広まったのか?[連載20]古森義久の内外透視

 

 

 

 

古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)

執筆記事プロフィールBlog

 

  慰安婦問題というのは、国際社会での日本に対する冤罪だといえるだろう。

 

  6月20日に公表された河野談話検証の有識者新報告がそのことを改めて裏づけたーーアメリカでのこの問題をめぐる動きを長年、報道してきた私がいまの時点で感じる総括である。

 

  私はワシントン駐在の産経新聞特派員として日本の慰安婦問題の取材に2000年代はじめからかかわり、とくに2007年のアメリカ議会下院での日本非難決議に関しては集中的に報道にあたった。

 

  このプロセスではアメリカや韓国、中国側は一貫して慰安婦問題を「日本軍の20万人の性的奴隷(sex slave)」と断定した。

 

  日本軍が組織的、政策的に朝鮮半島などの一般女性を強制連行して拘束し、奴隷に等しい売春婦にした、という見解が前提だった。

 

  日本の官憲が公式の政策として女性たちを強制連行して「性的奴隷」にしていたというのだった。

 

  ところがこの断定が事実ではないのだ。

 

  日本の軍や政府が組織的、政策的に一般女性を強制連行していたという主張の証拠はどこにも存在しないのである。

 

  そのことを膨大な資料や証言を基に裏づけたのが今回の有識者新報告だった。

 

  慰安婦の徴用は実際には民間業者が全面的にあたった。

 

  女性の募集は当時の 新聞広告などでも広く宣伝された。

 

  個々の女性のなかには家族の借金などを理由に本人の意思に反して徴用された人たちもいた。

 

  だが日本軍や日本政府が組織の 方針として無理やりに女性たちを徴用したことはなかったのだ。

 

  ではなぜ事実ではない「強制連行」が世界中で広まったのか。

 

  最大の理由は1993年に出た当時の官房長官の河野洋平氏による「河野談話」だといえる。

 

  同談話には日本軍による強制徴用があったことを認めたように受けとれる文言が入っていた。

 

  河野氏自身も当時の公式会見で官憲による強制性を認める発言をした。

 

 同時に朝日新聞が一貫して「強制連行」を強調する報道をした。

 

 いまでは虚構だらけの報道だったことが判明している。

 

 今回の新報告は当時の河野氏ら日本側が韓国側の一方的な主張に引きずられ、事実でないことも事実であるかのように黙認してしまった経緯を詳述してい た。

 

 慰安婦は軍隊のための売春だった。

 

 そこには女性たちの明らかな犠牲や悲劇があった。

 

 その事実にはいまの日本の政府も国民も謙虚に同情や反省を述べてしかる べきだろう。

 

 だが日本の軍隊や政府が罪のない若い女性たちを公式の方針として大量連行していたと断ずる糾弾はあくまで冤罪であり、ぬれ衣なのである。

 

 その点を主張することは後世の日本国民の名誉のためにも不可欠だろう。 

 

かつて私は「日本国は国のあり方で岐路に立ったとき、朝日新聞の主張と正反対の道を選べば、だいたいうまくいく」と書いたことがあります。

 

まあ冗談半分でもありましたが、対日講和条約と日米安保条約という戦後最大の課題では、そおとおりでした。もしも日本が朝日新聞の主張の方に進んでいれば、破滅的な国難に直面したことでしょう。

 

「単独講和(実際には多数講和)は日本を孤立させる」

「日米安保は日本をアメリカの戦争に巻き込む」

 

いずれも朝日新聞の主張の基調でした。

実在はしなかった悪魔化のシナリオです。

 

目の前にある特定秘密保護法とかODA軍事関連解禁提案という、現実的で日本の国益に資する政策を、ねじまげ、引き伸ばし、ゆがめて拡大し、起きもしない悪の事態をいかにも起きるかのようにして喧伝する。

 

その他にも実例は多々あります。

朝日新聞が北朝鮮への集団「帰国」を煽ったことや、慰安婦問題での河野談話の虚構を大報道したことも、その範疇です。

 

日米共同のミサイル防衛にも朝日新聞は反対していました。

 

防衛庁が防衛省になると、日本が前のめりの危険な軍国主義化へ進むと、主張していたのも朝日新聞です。

 

さてそんな背景で本日6月27日の朝日新聞朝刊をみると、こんどはODAについて

外務省の有識者懇談会の提言に反対しています。

 

日本のODAを外国の軍隊に向けて、その直接の対象が戦闘や軍事そのものではなく、災害救助や人道支援であれば、供与しても構わないという趣旨の提言です。

これまでは目的はなんであっても受け手に軍が出てくれば、供与はできない、というのが日本のODAの方針でした。

 

しかしいまでは中国の軍事恫喝を受けるベトナムやフィリピンに海上警備の艦艇を供与することや、海軍が使う港の整備を援助することが求められてきました。いずれも日本にとってプラスになります。同じように中国の軍事恫喝を受けている日本が対中防御の連携を強めることは日本自身にとっての利益です。

 

しかし朝日新聞はこのODAの軍事関連部分の解禁には反対なのです。ただしこの反対はあまり強くありません。でも日本にプラスになることは、なんでも反対というパターンは背後に浮かび上がっています。

 

さてこうして朝日新聞の最近の論調をみると、とにかく反対また反対、いまの日本の政権が進めようとする主要政策にはすべて反対です。なにしろ安倍政権を倒すことが社是だそうですから、ふしぎはありません。

 

でもそれにしても、朝日新聞は安倍政権の国家安全保障会議設置、防衛費の増額、

そして特定秘密保護法と、すべて常軌を逸したほどものすごい反対キャンペーンを展開してきました。

 

さらに集団的自衛権の行使解禁に対する朝日新聞の叩きキャンペーンも異様なほどのしつこさ、大げさ、さでした。自国の防衛を強めることがとにかく危険だとして反対するのですから、この新聞の帰属はどこの国かと、いぶかります。

 

でも肝心な点はどの案件も朝日新聞の反対にもかかわらず、きちんと成立し、現実の日本国の政策になっていく、ということです。朝日新聞の狂気のようなキャンペーンは失敗なのです。安倍政権への国民の支持率を大きく下げるというような効果さえありません。

 

朝日新聞が安倍政権悪魔化の笛をピーヒョロ、ピーヒョロ、必死で吹いても、多数派は踊らないということでしょうか。

 

国民の多数の意思で選ばれた安倍政権が民主主義的な手続きに沿って進める一連の日本正常化の政策や措置、そのすべてに反対する朝日新聞です。

 

しかし日本国は粛々と前進する。その跡には朝日新聞の政権叩きの醜いゴミのような記事類の残骸が累々と横たわる。やがて中国の方から吹いてくる汚染の空気にそのゴミも吹き飛ばされて、消えうせることでしょう。

 

でも社是として全紙面を動員して、猛反対する案件がすべてみごとに成立していく。

反対する側は哀れです。言論機関、言論人として、たとえ一瞬でも、もしかしたら、

もしかしたら、自分たちの考えが根っこからまちがっている、とは疑わないのでしょうか。

 

本日の朝日新聞への感想でした。

 

なお以下のサイトでも朝日新聞論を載せています。

 

 

 慰安婦問題の最近の報告書と河野談話についてです。

 

日本ビジネスプレス「国際激流と日本」からです。

原文へのリンクは以下です。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41042

 

国際激流と日本

慰安婦問題「濡れ衣」の元凶は誰か河野談話は見直すのが自明の策

 

                                                             +++++++++++++++

  慰安婦となった女性たちの多くが自分の意思に反して売春をしていたことは事実だろう。

 

  そうした女性たちの体験が悲惨だったことも間違いない。

 

  多くの 悲劇や惨劇があったことだろう。

 

  そのこと自体に、現代の日本の政府や国民が遺憾の意を表し、場合によっては謝罪や賠償をすることも不自然ではない。

 

  そして 現実に日本側はそうしてきた。

 

  だが、日本の軍部や政府が組織的に罪もない女性たちを大量に強制連行していたかどうかは、別の次元の問題であり、実はその点こそがこの案件の心臓 部なのだ。

 

  なぜならこの問題に関する国際的な非難は、いずれもこの「官憲による強制連行」に集中しているからだ。

 

  外国からの非難はみな日本軍による組織 的、計画的な強制連行があったという前提に立っている。

 

  今まで日本側は決してそれに正面から反論することはなかった。

 

  日本政府が反論や否定をしてこなかったのは、明らかに河野談話のためである。

 

  しかし、その河野談話の虚構部分がいまや露わにされたのである。

 

  日本軍が慰安婦の強制徴用にも、単なる徴用にも、直接に関わった証拠はなにも存在しないという総括だった。

 

  だから「日本軍の性的奴隷」という主張は突き崩されたのである。

 

 中韓側にも、米国側にも、「慰安婦の存在自体があってはならないことであり、多くの女性たちが悲惨な目に遭わされたのだから、官憲による強制連行 の有無は問題ではない」という主張がある。

 

  だが、強制連行の有無の違いは決定的なのである。日本の官憲による強制連行がなければ、「日本軍の性的奴隷」と いう概念も表現も成り立たないからだ。

米国議員が日本を非難するポイントとは

 慰安婦問題を巡る議論のカギとなる“強制性”について、私自身が聞いた重要な証言がある。

 

  2007年の米国下院での民主党議員の発言だ。

 

  日本非難 の慰安婦決議案をマイク・ホンダ議員とともに推進したエニ・ファレオマバエンガ議員の言葉である。それは以下のような内容だった。

 

 「この決議案は、日本帝国の軍隊によるセックス奴隷、つまり強制的売春の責任をいま日本政府が公式に認めて謝り、歴史的責任を受け入れることを求 めている。日本の軍隊が5万から20万人の女性を朝鮮半島、中国、台湾、フィリピン、インドネシアから強制的に徴用し、将兵にセックスを提供させたことは 歴史的な記録となっている。米国も人権侵害は犯してきたが、日本のように軍の政策として強制的に若い女性を性の奴隷にしたことはない」

 

 以上の日本糾弾でも、焦点はあくまで「日本軍による女性の強制的徴用」「日本軍の政策として強制的に若い女性を性の奴隷に」したという断定なのである。

 

  もしも日本軍による政策としての強制的徴用がなければ、このファレオマバエンガ議員の非難は成り立たなくなる。

(つづく)

 慰安婦問題での河野談話を詳しく点検する有識者たちの新しい報告が発表されました。そこで明らかになったのは、やはり河野談話の欺瞞性でした。しかもその談話の作成の手続きには、幾多の欺瞞や秘密があったのです。

 

そのへんの報告をします。

 

日本ビジネスプレス「国際激流と日本」からです。

原文へのリンクは以下です。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41042

 

国際激流と日本

慰安婦問題「濡れ衣」の元凶は誰か河野談話は見直すのが自明の策

 

 

                                      ++++++++

 慰安婦についての河野談話を検証する有識者の新報告は、不当な非難によって日本が国際的にいかに傷つけられてきたかを改めて浮かび上がらせた。戦時の日本の官憲が組織的に女性たちを無理やりに連行するという「強制」はなかったことが裏づけられたからだ。

 

 だが、すでに現代の日本はその「強制」の濡れ衣によって、さんざんに誹謗されてきた。日本国民の名誉を傷つけた“惨劇”とも言えるこんな事態を引き起こした元凶は誰なのか。

 

 私はワシントン駐在の産経新聞記者として、いわゆる慰安婦問題の報道に長年あたってきた。特に2007年に米国連邦議会の下院が慰安婦問題での日 本非難決議を採択した当時、日本のメディアの中ではおそらく最も多くを取材し、報道した記者だったと思う。その体験からすれば、今度の報告はようやく確認 された「7年目の真実」だった。

露わになった河野談話の虚構部分

 いわゆる慰安婦問題の誤認の基本構図を改めて説明しよう。

 

 問題の核心は日本の軍、あるいは政府機関、つまり官憲が日本軍将兵の性的行動のために女性たちを強制的に連行したかどうか、である。

 

 1993年の河野談話にはその種の強制連行があったという意味の記述があった。その談話の責任者の河野洋平内閣官房長官(当時)は「強制連行の事実があった」と述べた。ところがそんな日本官憲による強制連行はなかったのだ。

 

 だが、強制連行はあったとする虚偽の主張から国際社会ではこの慰安婦たちを「日本軍による20万人の性的奴隷」と断じる日本非難が起きた。その象 徴が前記の米国下院決議であり、96年の国連クマラスワミ報告だった。いずれも日本軍当局がその方針として、朝鮮半島や中国、インドネシアなどの若い女性 を無理やりに連行して、売春を強制したという断定を前提としていた。そして河野談話がその歴史的事実を認めている、という主張だった。

(つづく)

 

  アメリカと中国との関係がいよいよ険悪となってきました。

 

 米中関係は一体どうなるのか。

 

 両国がともに相手は戦争まではしないだろうと信じて、軍事的なブラフをかけあう。

 

 どうもチキンゲームが始まったらしいのです。

 

 でもどちらかが一歩、道を誤ると、危険な戦争という断崖絶壁が黒い穴を広げています。

 

  Japan In-Depth の「内外透視」という私のコラムからです。

 

 原文へのリンクは以下です。

 

 

 

 http://japan-indepth.jp/?p=7159

 

[古森義久]<現実味を帯びてきた?米中戦争の可能性>全面衝突と破局を招く温床が十分にできつつある[連載19]古森義久の内外透視

 

 

 

 

 

 

古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)

執筆記事プロフィールBlog

 

 チキンゲーム(chicken game)とは、2人の当事者が相手に向かって車を疾走させ、どちらが正面衝突を恐れて、先にハンドルを横に切るかを試す「臆病者ゲーム」のことである。

 

 いまアメリカと中国との間で、このチキンゲームが米中戦争という危険きわまるシナリオを賭けて、展開されるようになった。

 

 わが日本ももちろんその危険の中心地に立っている。

 

 中国はアジアでアメリカ主導の安全保障秩序に挑む姿勢をますますあらわにしてきた。

 

 オバマ大統領はアジア歴訪で、中国の軍事がらみの膨張に抑止の警告を発 した。

 

 だが中国は同大統領が帰国してすぐ、南シナ海のベトナムの排他的経済水域(EEZ)内で国際規範を破り、一方的に石油掘削の作業を始めた。オバマ大 統領の横面を殴るような行動だった。

 

 中国は南シナ海ではさらにアメリカの同盟国のフィリピンをも軍事恫喝し、東シナ海でも日本領土の尖閣に対して軍事力を背景に一方的な侵入を繰り返 す。

 

 中国のこうした好戦的な行動は、結局アジアから米軍を追い出し、自国の勢力圏を広めたいという意図による、という見方がワシントンではコンセンサスと なってきた。

 

 ワシントンでのこの論議でいま最も関心を集めているのはオーストラリアの元国防次官で中国戦略研究家のヒュー・ホワイト氏が発表した論文である。

 

 中国の狙いを分析した同論文の主要点は次のようだった。

 

「中国はアジアからアメリカを追い出すために、アメリカとアジアの同盟諸国とのきずなを弱めようとする。中国側は アメリカがたとえ同盟諸国に軍事攻撃があっても、中国と全面戦争をする意欲はないとみる。その結果、同盟諸国への軍事圧力を高め、やがてはそれら諸国がア メリカから離反していくことを期待する」

 

「一方、アメリカ側も中国は対米全面戦争だけは絶対に避けるとみている。だから中国がアメリカの同盟諸国に軍事攻勢をかけても、決定的な攻撃にはならないとみる」

 以上のホワイト氏の考察は米中両国がともに相手は最終的な戦争はしたくないから、軍事攻撃に通じうる威嚇もそう重大に受けとることはないと判断する、とみるわけだ。

 

 一種のチキンゲームである。

 

 しかし、そこには小さな誤解や計算違いが全面衝突という破局を招く温床が十分にできつつあるのだといえよう。

↑このページのトップヘ