2015年03月

 アメリカ側は安倍首相のワシントン訪問とアメリカ議会での演説で本当に「戦争への謝罪」や「侵略や植民地支配へのお詫び」を求めているのでしょうか。日本のメディアの報道をみていると、そんな印象が伝わってきます。

 ところが現実はそうでもない。そのへんの実態の一端について書きました。

【朝刊 1面】
【あめりかノート】古森義久 安倍首相、米議会演説への期待

 「安倍晋三首相は米国議会での演説についてとくに米側からの助言は必要としないでしょう。なにを述べるべきか、首相自身に適切に判断する能力が十二分にあるからです」

 ジム・タレント前上院議員は強い口調で答えた。つい4日前、連邦議会の議員会館での会話だった。米中軍事関係についての公聴会で彼は現職の議員とともに 中国の尖閣諸島への攻勢に警告を発し、日米同盟の重要性や安倍政権の防衛重視策への前向きな評価を語った。日本への言及が頻繁だった。


 だから私は会合後の一対一の会話でつい「安倍首相が4月末に議会で演説をするが、なにを語るべきか、助言がありますか」と問うたのだった。


 するとタレント前議員は冒頭の言葉を述べ、少し考えてからまた語った。


 「僭越(せんえつ)ながら期待としては安倍首相には日本が長年、米国と歩調を合わせてアジアや世界の平和と安定に寄与し、今後もそうした道を進むという方針を強く伝えてほしいです」


 タレント氏は上院5年、下院8年、共和党の連邦議員だった。2007年に現役でなくなった後も上下両院軍事委員会での実績を買われて議会の諮問委員格で 活動する。いま両院で圧倒的多数を占める共和党のジョン・マケイン上院議員らとの絆が強い。米国議会を多数派の視点から俯瞰(ふかん)するには適切な人物 なのだ。日米関係にも近からず、遠からず、一定距離をおいての全体図を知る前議員だともいえる。


 そのタレント前議員に安倍首相は米議会での演説で過去にどう触れるべきかと、あえて質問してみた。

 「過去というならば、日本が戦後の早い時期から東西冷戦中も日米同盟を世界でも最も成功を博した2国間同盟にしてきた実績を語るべきでしょう」


 意外だった。彼の「日本の過去」とは第二次大戦ではなく、戦後70年間の前半を指したからだ。会話を続けたが、タレント氏は「首相が中国の軍事脅威に備 えて日本の防衛を強化する意向を表明してくれれば、もっとよいですね」などと述べる一方、日本の過去の戦争には触れないままだった。


 他方、オバマ政権周辺からは安倍首相が「過去」に関して「植民地支配」「侵略」「謝罪」というような言葉を述べるべきだ、との要求の情報が流れてくる。この要求に従うと、首相は戦後70年談話と合わせ3カ月余に2度も対外的な謝罪を繰り返すことになる。


 だが議会の絶対多数派の共和党議員の認識を熟知するタレント氏はまったく異なる期待を示すのだ。もっとも上院共和党ではマケイン議員や若手のマルコ・ル ビオ議員が安倍首相の靖国参拝へのオバマ政権の「失望」表明に対しても同盟国の最高指導者には不適切な叱責だと非難していた。歴史認識への姿勢がオバマ陣 営とは違うのだ。


 最近の米国では日本のこれ以上の謝罪に民主党寄りの日本研究学者の間でも「日本がどれほど謝罪しても中韓両国は絶対に満足せず、日本国内の分裂を深める だけだ」(ダートマス大学のジェニファー・リンド准教授)という反対意見も出てきた。安倍首相にはあくまで米国全体を幅広くみて議会演説の内容を決めてほ しいところである。 (ワシントン駐在客員特派員)


以下のような記事を書きました。

中国の人工島建設を阻止せよ、米議員4人が書簡

場合によっては実力阻止も、オバマ政権に強い対応を迫る

2015.3.25(水) 古森 義久
 
南沙諸島での滑走路建設、「正当」と中国将軍

フィリピン軍が公開した、ファイアリークロス礁に停泊する中国漁船(2012年7月17日撮影、資料写真)〔AFPBB News



 「最近、中国は南シナ海で海洋を一方的に埋め立てて人工島を建設している。米国は、中国の野心的な領有権拡大を抑えるため人工島建設を阻止すべきである」──。


 米国議会上院の超党派有力議員たちがオバマ政権に緊急書簡を送り、実力行使をも含む強固な対策の実行を要求した。中国は東シナ海でも同様の一方的な領土拡大を図っており、日本にも影響の及ぶ動きだと言える。

領有権紛争中の海域を占拠

 この1~2年の間、中国は南シナ海での領有権拡大のために、海洋の岩礁や浅瀬に大量の土砂や土台を埋め立て、新たな島や陸地を造る作業を大規模に 進めてきた。特にベトナムやフィリピンと領有権を争うスプラトリー諸島(南沙諸島)では、もともとは島ではなかった岩礁や浅瀬に土砂などを大量に埋め、新 しい島にしてしまうという強引な方法である。


 スプラトリー諸島全体の領有権はそもそも紛争中であり決定していない。それにもかかわらず中国当局はその大部分を一方的に軍事手段で占拠してきた。


 そのうえ、その海域の数カ所に今度は人工島を造成して軍事基地にするというのだ。国際法上でも外交規範に照らしても、露骨な無法行為だと言える。


 米国側の情報によると、中国当局は過去12カ月ほどの間に、埋め立て作業によってスプラトリー諸島のガビン礁に11万4000平方メートル、ジョ ンソン礁に10万平方メートル、フィアリークロス礁に1平方キロメートルの新たな島や陸地をそれぞれ築いた。特にフィアリークロス礁の人工島には、長さ 3000メートルもの滑走路が建造されつつあるという。これら3カ所の埋め立て陸地の広さは合計すると1.2平方キロメートルほどで、竹島の6倍、日比谷 公園全体の6倍以上の面積となる。

(つづく)

 日本の安全保障論議ではもっぱら自衛隊を抑えつけることに最大のエネルギーが向けられています。
 いわゆる「歯止め」論議です。

 日本の防衛のために歯止めをかける最大の対象は外敵のはずです。
 この奇妙な現象について以下の一文を書きました。
 Japan In-Depth というサイトです。

[古森義久]【我が国安全保障論議の奇妙さ】~日本は国際社会のモンスターなのか?~


古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」

執筆記事プロフィールBlog

日本の最近の安全保障の論議は奇妙な倒錯が目立つ。日本国を外敵から守るのではなく、日本の自衛隊から守ろうとするような発想が顕著なのである。「歯止 め」の名の下に、日本を守る側の自衛隊の行動をあらゆる方法で抑えつけようとする主張が先行するからだ。日本の同盟相手のアメリカからこの日本の「歯止 め」論議をみていると、その異端さがいっそう目立つのである。


日本をより効率的、より総合的に守るという意図の新たな安全保障法制の審議が国会でも本格的な段階を迎えた。日本の自衛隊が集団的自衛権の行使容認 という新しい背景のなかで、海外でどのように活動できるのか、が主題である。その目的はいうまでもなく日本を守ること、日本国民の生命や財産を守ること、 日本の存立に重要な他国の危機に支援をすること、などだろう。


日本を守ることは当然ながら日本本土への直接の軍事攻撃があった場合の防衛だけではない。日本の潜在敵国の軍隊が日本の領土や領海のすぐ外で日本への侵略に着手しようとして米軍と衝突したというような場合に自衛隊が米軍を支援することも、日本を守ることなのだ。


だがこうした日本の安全保障をめぐる論議のプロセスでは常に「歯止め」という言葉が語られる。「歯止め」とは一般的に「物事の行き過ぎや悪化をくい 止める手段」を指す。日本の安全保障論議で「歯止め」といえば、普通なら日本を攻撃、侵略、あるいは軍事威嚇する相手への歯止めと考えるのが自然だろう。


しかしいまの日本国内での論議は正反対なのだ。「歯止め」とは日本の自衛隊が他国を侵略や攻撃しないようにその行動に事前に厳しいブレーキをかけて おくという趣旨なのだ。その一方、日本への敵に対する歯止め策はまったくといってよいほど語られない。一国の安全保障論議としては全世界でもまず稀有であ り、日本の国際的な異端を改めて物語る現象だといえる。


この異端の源流をさかのぼると、どうしても憲法第9条にぶつかる。アメリカが占領時代に起草し、日本の永遠の非武装を企図したこの条項は世界の他の 主権国家には例がない。この憲法の条項を変えることに絶対反対だという側には、日本が他の国家並みの自国の防衛の権利を持てば、やがて他国への侵略を始め るという示唆があるといえよう。


その点で思い出すのは3年ほど前にワシントンでの日本の憲法についてのシンポジウムで聞いた以下のような言葉である。「日本は国際社会のモンスターというわけですか。危険な犬はいつまでも鎖につないでおけというのに等しいですね」


スタンフォード大学の研究所などで日米関係やアジア安全保障を専門に研究してきた米人の中堅学者ベン・セルフ氏の言明だった。日本の憲法改正は危険だとする他のアメリカ人学者への反論だった。

だが最近の日本国内の安保論議をみると、日本を国際社会のモンスターとみているのは他ならぬ、当の日本人なのではないか、と実感してしまう。



[古森義久]【摘発!中国“出産旅行”ビジネス】~米で出産、子に米国籍~


古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」

執筆記事プロフィールBlog

アメリカでの中国パワーの膨張は目ざましい。私の駐在する首都ワシントンでも政治や外交面での中国系勢力の活動がダイナミックに展開され、かつ拡大してい る。アメリカの他の地域では経済や金融での中国パワーの広がりが伝えられる。そんななかで西海岸のカリフォルニア州では中国女性にアメリカで子供を産ま せ、アメリカ国籍を取得させるという特殊な「出産旅行」の巨大な組織が摘発された。いま広がる米中関係の特異な一面ともいえそうだ。


アメリカの複数メディアの報道によると、アメリカ政府の出入国管理局、国土安全保障省、国税庁などの合同捜査班が3月上旬、ロサンゼルス地区の中国 系旅行企業の「ユーウィン・バケーション・リゾート」「スター・ベビー・ケア・センター」「USAハッピー・ベビー・インク」の3社のオフィスや関連施設 数十箇所に強制捜査をかけて、証拠多数を押収し、関係者らに出頭を求めた。違法入国、脱税、詐欺などの容疑だという。


当局の発表によると、これら3社はいずれも中国の富裕階層の女性を対象に妊娠中にアメリカに入国し、出産をして、その子供にアメリカ国籍を取得させ て、また中国にともに帰国させるという旅行プランを提供してきた。中国女性たちはみなアメリカ当局から正規の観光ビザを取得して、入国し、3ヶ月から6ヶ 月、滞在する間に出産をすませる。


中国国内ではこれら企業は非公式のルートでこの「アメリカへの出産旅行」を宣伝し、一人当たり5万ドル(約600万円相 当)の費用ですべての世話をすることを約束して、客を集めていたという。


アメリカでは自国内で生まれた人間はすべて米国籍にするという属地主義を取っており、米国籍となれば、12歳までの無償教育や福祉を受ける権利が生 まれるほか、外国にいても21歳以上になれば、外国籍の家族をアメリカに移住させる保証人としての権利も与えられる。中国側ではこの諸点を利用し、自分の 子供の米国籍を使って、両親や兄弟姉妹がアメリカに移民として入国することなどを狙うのだという。


今回の摘発を受けた3企業はいずれも妊娠を隠しての観光ビザの取得方法やアメリカ入国の際の手続き、入国後の生活や出産手続きなどの一切を手配する ことで多額の利益を得てきた。そのうちの1社だけでも、近年に少なくとも400人の中国人の子供をアメリカ国内で出産させ、母親とともに無事に中国に帰し ていたともいう。


こうした現象も超大国としてのアメリカの魅力の例証だともいえるが、その一方、中国側で自分たちの子供にアメリカ国籍を取らせて、アメリカとのきず なを深め、それを利用してアメリカの内部にまで食い込んでいくという傾向の表れでもあろう。中国政府が果たして関与しているのか、黙認しているのかは不明 だが、中国側の対米政策の一環としてみても、まちがいではなさそうだ。


朝日新聞の3月14日朝刊におもしろい記事が載りました。小さな記事です。

「独首相の発言の一部否定」という見出しでした。
内容の要旨は以下のようでした。

 ドイツのメルケル首相が日本訪問中に民主党の岡田克也代表と会談した際に岡田氏がメルケル
首相の発言だとして発表した内容には間違いがあったと、ドイツ政府から公式に否定があった。
 岡田氏は「メルケル氏が慰安婦問題を自ら取りあげ、『日韓関係は非常に重要だからきちんと解
決した方がよいのではないか』と述べた」と発表していた。
 だがドイツ政府は「メルケル首相は過去の問題について『日本政府がどうすべきだ』という発言をし
た事実」はないと通告してきた。

朝日新聞のその記事はこんな内容のごく簡単な記述でした。その扱いもきわめて微小でした。
しかしその記事は実は非常に重大な意味を持っています。

民主党の岡田克也氏がメルケル首相が慰安婦問題をわざわざ持ち出していかにも日本政府に対して
その解決を求め、暗に安倍政権のいまの姿勢を批判したかのように発表していたことが裏打ちされた
からです。

メルケル首相が日本の内政に干渉するような発言をしてまで、慰安婦問題で安倍政権を非難
する。そんな印象を与える発表を岡田氏がしていたことになります。しかしドイツ政府は、そうではないと
否定したのです。

だからドイツ政府の通報が正しければ、というより、ドイツ政府はメルケル首相の言動についてまず正確なことを述べる立場にあるはずですから、その発表は正しいでしょうから、岡田氏の発言が不正確だったということになります。不正確というか、故意のウソというか。全体の展開からみると、どうも後者ということになりそうです。

ドイツ政府からの通報はある意味では岡田発言への抗議であり、訂正です。ウソを正したといっても、
見当違いではありません。

しかし一般の読者はこのメルケル発言に関しては不正確な岡田発言だけを知り、後からのドイツ側の訂正
は知らないままにすませてしまうでしょうね。新聞の読み方は難しいということにもなります。あるいは岡田
克也氏の発言には気をつけろ、ということでしょうか。 



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