2015年06月


[古森義久]【オバマ政権、対中強硬路線顕著に】~対中ソフト路線政策担当者2人が退陣~


 

古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」

執筆記事プロフィールBlog



アメリカの中国に対する政策の変化はますます顕著となった。オバマ政権の対中姿勢がこれまでより強固になってきたのだ。ワシントンではいまその証拠の一つとしてオバマ政権中枢の中国政策担当者2人の退任の意味が熱心に語られるようになった。


オバマ政権は中国の軍事膨張に対して、「中国」という国名をはっきりと挙げて批判をするようになった。まだ事態は流動的だから、今後のさらなるジグ ザグがあるにしても、オバマ政権の対中姿勢はこれまで6年半の大統領在任中でもいまや最も大きな変化をみせてきたといえる。その最大の要因は南シナ海での 中国の軍事がらみの野心的な領土拡張の動きである。


さてそのオバマ政権の対中政策の硬化を象徴的に示す舞台裏の出来事がいまや舞台の上でも語られるようになった。


その出来事とはオバマ政権の対中政策 を長い期間、支えてきた国家安全保障会議アジア上級部長のエバン・メディロス氏と国家情報会議東アジア担当官のポール・ヒア氏の退任である。


2人の最近の 退任は公式には理由は述べられていないが、2人共、もともと中国に融和的な態度で対話を求め続けたオバマ政権の当初の対中政策推進の中心人物とされてき た。


メディロス氏は中国研究の学者出身で、アメリカ政府の政策担当者には珍しく中国の社会科学院で長期間、研修した経歴を持つ。中国へのソフト路線の提唱者として知られ、オバマ政権の台湾へのF16戦闘機の新鋭の改良型売却を中国の反対を重視する形で猛反対したこともある。


ヒア氏はCIA(中央情報局)出身で、やはり中国が専門だが、中国の軍事拡張をアメリカにとっての脅威だとする見方には一貫して反対してきた軌跡がある。このため米軍のアジア太平洋関係者たちと意見を衝突させることも多かったという。


このメディロス、ヒア両氏がオバマ政権の対中政策形成の中枢から去った結果、後任者はいずれもこの2人よりは中国に対して厳しい認識を持つ専門家たちとなることから、ワシントンではもっぱらこの退任を「オバマ政権の対中政策のシフト」として論じる向きが多い。


この2人がいなくなったために、政権の対中政策が強固になったのか、あるいは逆にオバマ政権の対中政策が強固になったために、2人は退任したのか、即断はできないものの、「対中ソフト路線」の2人組の退場は意外と大きな効果をも発揮しそうである。


こんな記事を書きました。

日本ビジネスプレスの私の連載からです。
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北朝鮮、核弾頭の小型化に成功と発表

2015年5月、北朝鮮は核弾頭の小型化に成功と発表した。北朝鮮の新型の精密戦術誘導弾の試射とされる写真。国営朝鮮中央通信公開(2014年6月27日公開、撮影日不明、資料写真)。(c)AFP/KCNA via KNS〔AFPBB News


 日本の反核運動もついに国際的な現実の厳しさに直面したようだ。広島、長崎の体験を基に核廃絶を叫んでいればこの世界から核兵器がなくなるという基本姿勢があまりに空疎であることが、改めて証明されようとしているのだ。

 日本が経験した被爆の悲惨さは、もちろん全世界に向けて訴えられなければならない。人類史上、初めて核兵器の直接的な被害者となった広島や長崎の 人たち、そして、その後継世代の人たちの実情や心情を世界にアピールし、将来に引き継いでいくことは日本の歴史的な使命とさえ言えるだろう。


 しかし、それを踏まえたうえであえて述べるならば、日本のこれまでの反核運動は、国際社会で現実に存在する核兵器とその脅威によって否定されてしまったと言えよう。最近の2つの出来事によって、それが避けられない現実として被爆国の日本に突きつけられたのだ。

日本の被爆国としての訴えを否定する中国

 第1にはこの5月、広島、長崎の被爆地としてのアピールに中国が正面から反対を表明したことだった。


 ニュヨークの国連本部で開かれた「核拡散防止条約」(NPT)再検討会議の最終文書に、日本政府は「各国指導者に広島と長崎への訪問を呼びかけ る」という文言を入れることを求めた。もちろん核兵器の被害を訴え、核廃絶に役立てるという意図だった。この案には同会議で発言した約10カ国の代表のす べてが賛意を表した。

 〔つづく〕

以下のようなコラム記事を書きました。


国際  投稿日:2015/6/7

[古森義久]【2049年に米凌ぐ超大国化目指す中国】~南シナ海軍事基地化が示唆するもの~


古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」

執筆記事プロフィールBlog

アメリカの長年の中国に対する政策は根幹部分で大きく間違っていた。中国に「関与」を求めて既成の国際秩序への普通の参入を期待しても、中国にはその意思 は最初からないのだ――こんな指摘がアメリカの中国研究の最古参の権威からなされて、ワシントンでの波紋が広がっている。


この指摘を公表したのは中国軍事研究ではアメリカでも第一人者とも目されるマイケル・ピルズベリー氏である。最近刊の『100年のマラソン=アメリ カを追い抜きグローバル超大国になろうとする中国の秘密戦略』と題する著書での大胆な見解の公表だった。その骨子は以下のようだった。

 

・アメリカは1970年代のニクソン政権時代から中国には協調的な態度を取り、米中相互の関与を進めれば、中国もやがてはそれに応じ、アメリカ主導の既成の国際秩序、国際社会に加わり、国際規則を守るようになる、という期待に基づく政策をとってきた。


・中国も「平和的台頭」というような偽装めいたスローガンでアメリカを安心させてきたが、現実には建国から100年目の2049年を目標に経済、政治、軍事の各面でアメリカを追い抜く超大国となり、自国の価値観や思想に基づく国際秩序と覇権を確立しようとしているのだ。


・ピルズベリー氏自身は中国が実際にはアメリカを圧して、自国が覇権を行使できる世界秩序を構築することを意図している事実を2010年ごろから認 識するにいたった。アメリカ政府でもCIA(中央情報局)などはその事実を認めるようになった。対中関与政策が中国をアメリカの好む方向へ変質させるとい うのは幻想だといえる。

 

そして建国から100年をかけてのこの野望達成の企図を中国共産党中枢の当事者たちがひそかに「100年のマラソン(馬拉松)」と呼ぶのだという。


アメリカの普通の中国研究者がこのように革命的な見解を発表したのならば、それも一つの異色の意見として軽視されただろうが、なにしろピルズベリー氏は 1970年代から70歳代に入る2年ほど前まで一貫して国防総省の長官顧問など重要な地位に就き、中国の軍事動向を分析してきた著名の権威なのである。


だ から彼の今回の発表はワシントンの中国研究の専門家たちの間でも衝撃的な影響を広げている。


この見解を基にいまのオバマ政権の南シナ海での中国の埋め立て作業など無法な行動への強固な対応をみると、なるほどと思える点も多くなる。日本にとっても認識しておくべき新しい対中国観だろう。


6月4日午前10時すぎからのNHKテレビの「くらし解説」という番組を偶然みていたら、NHKの政治偏向を
実感させられました。

テーマは安保法制、この課題をノンポリ主婦層にわかりやすく解説するという趣旨の番組でしたが、その趣旨
はもっぱら政府が進めようとする安全保障関連法案への反対をあの手この手で発信するのです。

これだけの大きな政治課題を公共放送が解説するならば、賛否両論をきちんと紹介する義務が放送法などで決められているはずです。しかしこの番組では安保関連法案をけなすばかりでした。しかもきわめて核心をそらしての姑息な反対論なのです。

とにかく大前提が「安倍政権はなぜこんなに急ぐのか」「こんなたくさんの法案が一時に出ると、理解できない」「アメリカの戦争に巻き込まれる」といった反対意見の反映がまずありきでした。

法案を説明する島田敏男解説委員という方が日米同盟を説明するのに「アメリカが米軍を駐留させることができる同盟国」というのにも、口あんぐりでした。アメリカが日本を防衛する責務を負うのが日米同盟の日本にとっての最大の効用です。それをいかにもアメリカの都合のためだけの取り決めのように切って捨てる。

島田氏の解説ではさらに、「アメリカが世界の警察官を止めたから日本に防衛の負担を増大させる」という趣旨も述べていました。「世界の警察官」というのは粗雑な比喩的表現です。オバマ大統領はそんな表現を確かに述べたことはありますが、同盟国の防衛責務や国際秩序の保持責務は捨てていないことは南シナ海での中国との対決をみても明白です。

島田氏のおもしろいことはさらに「安倍政権の集団的自衛権の行使はあくまで限定的だから、そのことをきちんとアメリカに説明しなければならない」と述べた点です。アメリカにきちんと説明していないから、この法案はよくない、という示唆です。本気でそんなことを思っているのか。アメリカが日本の安保関連法案の内容をきちんと知ってはいない、というのですか。

そして決め付けは番組の進行役の女性が「日本はアメリカにばかり接近していると、かえって他の敵をたくさん作ってしまいますね」と述べたことです。日本の安全保障にとってアメリカは唯一の同盟国であり、特別に近い国です。そのきずなによって日本の戦後の平和や安定は守られてきたといえるでしょう。ところがこの女性はあっさりと、アメリカに接近することは危険だというのです。彼女個人の特別な意見なら大いに結構、しかしNHKは公共放送です。そこで事実上の日米同盟反対論を稚拙で乱雑な表現で述べる。いいのですかね。

こんな放送が少なくとも特定の意見に偏りすぎていることは明白だと思いました。



.国際  投稿日:2015/6/1

[古森義久]【安倍首相、米・ハリス海軍大将を見習うべし】~堪忍袋の緒が切れたアメリカ、中国の南シナ海人工島~


古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」

執筆記事プロフィールBlog

アメリカのオバマ政権の中国に対する姿勢が明確に強固になってきた。ごく最近でその変化を最初にはっきりと表明したのは日系米人として初めて米軍の太平洋軍の司令官に就任したハリー・ハリス海軍大将だった。


いま59歳のこのアメリカ軍人は日本人を母に、アメリカ人を父に、日本の横須賀で生まれた。その風貌は日本人の特徴をそれほど強くはみせていないが、本人は「日本人の血」をよく口にして、「母からは日本の美徳の義理について学んだ」などとよく語る。


太平洋軍は日本を含む東アジアから西太平洋全域と、広大な地域を管轄におく米軍三軍の統合軍である。その最高指揮官の交替の儀式がハワイのパール ハーバーで5月27日に催された。この式典での短い演説でハリス


司令官は新ポストへの抱負を語り、そのなかで次のように述べたのだった。


「わが太平洋軍は幾多のチャレンジに直面している。なかでも中国の南シナ海でのとんでもない主張は重大である」


中国の「とんでもない主張」とはもちろん中国が南シナ海で他国との領有権紛争中のスプラトリー諸島付近の浅瀬や環礁を勝手に埋め立て、自国領だと宣 言して、軍事基地などに使い、それがあたかも合法であるかのようにふるまう「主張」である。


ハリス司令官はまずこの中国の言動を「とんでもない (preposterous)」という形容詞で切って捨てた。この英語は「不合理な」とか「ばかげた」という意味でもある。中国の埋め立て作業をまちがい なく理不尽とか違法だと決めつけているのだ。


ハリス司令官の言葉は中国をはっきり名指ししている点でも新鮮だった。オバマ政権ではこれまでも中国の軍事行動の違法性や理不尽さを批判する際で も、中国という国名を出すことだけはなるべく避けるという傾向があった。


中国との正面からの対決や衝突はできるだけ回避するというオバマ政権のソフト路 線、事なかれ姿勢の表れだった。その背後にはアメリカが融和や友好の意図を示せば、中国側もそれに応じるだろうという願望があったわけだ。


だが現実には中 国は逆にアメリカの弱腰につけいるように、南シナ海や東シナ海で一方的な膨張策を次々にとってきたのだ。


しかしここにきてさすがのオバマ政権も中国の最近の南シナ海での新たな人工島づくりには忍耐の限度に達したという感じである。その結果がこんどのハ リス司令官の正面からの中国名指しとなったのだろう。


その例証としてオバマ政権のアシュトン・カーター国防長官も5月30日からのシンガポールでの安全保 障国際会議では中国の国名を明確にあげて、その膨張的な軍事行動を非難した。


日本では安倍晋三首相がいま国会で審議中の一連の安保関連法案の趣旨を説明する5月14日の記者会見で日本をめぐる安全保障環境の悪化を語り、北朝 鮮の国名などをあげながらも、中国には一言も触れなかった。

中国をあえて刺激しないという政治配慮かもしれないが、もはや国際的には慎重すぎ、同盟国のア メリカやその他の諸国にも遅れをとる認識になったともいえそうだ。


安倍首相、ハリス司令官を見習え、というところだろう。


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