2015年09月

 平和安全法制関連法をめぐる考察です。



 古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」

執筆記事プロフィールBlog


安保法制関連法案の審議では日本共産党の代表たちの反対論が歯切れのよさをみせた。だがこの政党の日本の安全保障政策とはなんなのか。反対の主張ばかりが目立つなかで、共産党自身がどんな安保政策を求めるのか、という探索も必要だろう。


安保法案での審議では共産党代表たちの舌鋒は鋭かった。志位和夫党委員長や小池晃政策委員長が「戦争法案は破棄あるのみ」と与党案を徹底非難した。


この法案は日本が自国とは関係のない遠い地域にまで出かけて、侵略戦争を始める目的なのだ、というような非難だった。アメリカと安保面で連帯することはそ もそも危険だと訴えていた。


だがいざ「もし中国軍が尖閣諸島に攻めてきたら、どうするのか」というような質問には共産党代表は「外交努力をすればよい」という式の非現実的な回 答もちらつかせた。


全体としては安倍政権の安保政策をこきおろしながら、では日本の安全保障や防衛のためにどうすればよいのか、という点では明確な言辞が ほとんどなかった。


しかし日本共産党の安保政策というのは、まず日米安保条約の破棄なのである。共産党の公式サイトでは基本政策として以下のような記述がある。


「日米安保条約=日米軍事同盟をなくす」


「安保条約第10条に即した、廃棄の通告で、安保条約をなくす」


「安保条約をなくせば、米軍基地の重圧から日本国民が一挙に解放される」


ではアメリカに頼らない場合の日本の安全保障はどうするのか。そのへんの共産党の政策は曖昧である。


「対等・平等の立場にたって日米友好条約を結ぶ」


「日本は中国や東アジアの国々に対して軍縮へのイニシアチブを取る」


日本共産党の代表たちは安保関連法案での審議では私の見聞した限り、「日米安保破棄」や「日米同盟撤廃」を正面から主張しなかった。


だが同党の政策は日米安保条約堅持の立場を取る民主党の政策とは根本から異なる。


日本国民の間では日米安保条約自体に賛成する人たちはどの世論調査でも7割とか8割を占める。ほぼコンセンサスとも呼べる支持の幅広さだろう。共産党があえて日米安保破棄の政策を叫ばないのも、この現実のためかもしれない。


日米安保支持層のなかでも今回の安倍政権の安保関連法に反対した人たちもかなりいただろう。その場合、あくまでも日米安保条約とそれに基づく日米同盟を受け入れたうえでの安保関連法への留保や批判だったといえよう。


しかし民主党は安保法案反対の運動では共産党と完全に手を組んだ。国会周辺のデモ集会でも岡田克己代表が共産党代表と文字どおり腕を組みあって、与党案への反対を叫んだ。


だが日米安保条約に賛成なのか、反対なのか、日本の国家安全保障にとっては決定的な差異さえある。民主党はそんな違いをまったく無視して、共産党と連携をしてみせた。民主党というのは自国の防衛政策に関しては原則を守らない野合の政党なのか、との疑問を禁じえない。




「非中立」の本性が露わになってきた国連事務総長

こうなることは最初から分かっていたはず

2015.9.23(水) 古森 義久
 
国連PKO要員、中央アフリカで少女暴行か 潘総長、責任者を更迭

潘基文(パン・キムン)国連事務総長(2015年6月11日撮影、資料写真)。(c)AFP/VYACHESLAV OSELEDKO〔AFPBB News


 国連の中立性から逸脱する潘基文国連事務総長の言動が目立つ。特に日本についての一方的な言動が顕著である。


 この韓国人元外交官が国連事務総長というポストにふさわしい人物ではなかったことは、今や誰の目にも明らかである。日本政府が藩氏の事務総長就任 に反対しなかったことは重大なミスだったと言わざるをえない。今からでも遅くはない。日本としては藩氏の欠陥を正面から提起すべきであろう。

日本を一方的に批判する藩総長

 9月3日、藩国連事務総長は中国政府主催の「抗日戦争勝利70周年記念」の式典と軍事パレードに出席して、国際的な物議をかもした。中立であるべき国際機関の事務責任者が、日本を明らかに標的とした政治色濃厚な行事に参加したのだ。


 日本政府は国連事務総長がこの式典や軍事行進に出席ことに事前に抗議した。日本だけでなく、米国などからも批判が表明された。だが藩氏は、日本政府の抗議に対して「国連は中立ではなく公正で不偏なのだ」などとわけのわからない反発の言葉を述べるだけだった。

(つづく)


選挙戦の不正で、あの「反日」米国議員が窮地に

若手ライバルに詰め寄られて資金集めで勇み足

2015.9.19(土) 古森 義久
 
米医療保険制度改革をめぐり「特攻隊」発言、日系議員が強く非難

ワシントンD.C.で議員らと談笑するマイク・ホンダ下院議員(右、2009年10月22日撮影)。(c)AFP/Getty Images/Chip Somodevilla〔AFPBB News



 米国連邦議会下院のマイク・ホンダ議員(民主党)は、日本でも最も知名度の高い米国政治家の1人と言ってよいだろう。2007年に慰安婦問題で日本を糾弾する決議を下院で採択させた張本人である。


 そのホンダ議員が選挙活動での一連の不正行為の容疑により、議会当局の倫理調査部の聴取や査問を受けている。その結果は同議員の政治生命を大きく左右することになりそうだ。

安倍首相の米議会演説でも内容を非難

 ホンダ議員はカリフォルニア州議会議員だった1990年代から「日本の戦争犯罪」を追及してきた。ただしその追及は、同じカリフォルニア州に本部 をおく中国系の反日組織「世界抗日戦争史実維護連合会」(略称「抗日連合会」)に指導され、資金面でも支援をされてきた。抗日連合会は在米中国人を指導部 中枢とし、中国の政府や共産党とも密接なつながりがある。


 ホンダ氏は2001年1月に連邦議会の下院議員に就任した。前年の選挙戦では、抗日連合会の幹部たちがこぞって選挙資金を寄付していた。ホンダ氏は下院議員に就任すると、慰安婦問題を日本の国家犯罪とみなして日本政府に謝罪を求める非難決議案を即座に提出した。


 同決議案は当初は議会指導部から優先的に取り上げられることはなく審議に回されなかった。しかしホンダ議員は毎会期、同じ議案を提出し続け、2007年の議会で民主党が下院の多数を大きく制すると同決議案も推進されることとなった。


 ホンダ氏は日系3世の米国人だが、韓国系、中国系との絆が強く日本を糾弾する言動が多い。今年4月末の安倍晋三首相の米議会演説でも、その内容を非難する数少ない議員の1人であった。

(つづく)

国際激流と日本

60年安保デモ参加者が目にした「その後の日本」

日本の平和を守ったのは皮肉にも日米安保だった

2015.9.16(水) 古森 義久
 
安保法案に反対、雨の中 都内でデモ

東京都内の公園で行われた安全保障関連法案に反対するデモに参加した人たち(2015年9月9日撮影)。(c)AFP/Toru YAMANAKA〔AFPBB News

 

壮大な歴史の皮肉とでも呼ぶべきか。


 昨今の安保法制関連法案への国会周辺などでの反対デモを見ていると、どうしても1960年(昭和35年)の安保条約反対のデモが想起される。現在 よりもずっと大規模なデモだったが、彼らの主張は通らなかった。逆に、主張が通らなかったことによってこそ、日本の平和や安定が保たれたのである。その事 実を改めて強く思わずにはいられない。


 安保法制関連法案の国会審議はいよいよ大詰めを迎えた。反対派は国会周辺で抗議デモを繰り広げるなど国会外での運動を強めている。民主党など野党もそうしたデモに「民意」があるとして政府に法案の撤回や修正を求めている。


 だが、反対デモの勢いで国会の法案の是非が決められるべきなのか。

55年前に酷似している現在の状況

 この点で想起されるのが1960(昭和35)年の出来事である。


 つい先日の9月13日、私はフジテレビのニュース討論番組「新報道2001」に出演し、1960年の改定安保条約反対運動の「歴史の教訓」を番組 内で提起した。


  同じ番組に出演した民主党幹事長代理の福山哲郎参議院議員が「最近の国会周辺でのデモに12万人以上(警察発表は3万数千人)が集まった。 これほど国民の反対が強いのだから、この法案は採決されるべきではない」と主張したことに対してだった。

(つづく)



.社会  投稿日:2015/9/14

[古森義久]【安倍首相に対する常識外れの罵りに疑問】~「お前は人間じゃない!」と叫ぶ大学教授~



古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」

執筆記事プロフィールBlog


「お前は人間じゃない!」


こんな言葉を大勢の人が集まる場で浴びせられたら、あなたはどうするか――


その表現の非常識さにあきれて、言葉を失うかもしれない。だが同時にその表現の粗暴さを逆に非難するかもしれない。いずれにしても、相手を人間ではないなどと断ずる表現は言葉の暴力だといえるだろう。


前述の言葉は実は法政大学教授の山口二郎氏により安倍晋三首相に浴びせられた公開の場での発言だった。


産経新聞の報道などによると、8月30日、国会周辺での安保法制関連法案反対の集会での演説だった。


安保法制法案への反対のなかでは、映画監督の宮崎駿氏も安倍首相を「愚劣」と断じた。


専修大学教授の広渡清吾氏も「バカか、嘘つきか」と述べた。


こ の反対運動での学生団体「SEALDs(シールズ)」代表の奥田愛基氏は安倍首相の名をあげて「バカか、お前は」と述べたという。


いずれもニュースメディ アの報道に記録された発言である。これらはいずれも常識の範囲を超えたののしりだといえよう。


簡単にいえば、悪口雑言、最近の流行の用語を使えば、「ヘイ ト・スピーチ(憎悪表現)」である。


いよいよ大詰めを迎えた国会での安保法制関連法案の審議は国民の間でも当然、大きな論議の輪を広げる。

反対側ではとくに国会の付近に多数の人数を集め、連日のように気勢をあげる。そうしたなかでの反対派の代表たちが安倍首相個人へのこんな乱暴なののしりを発するのだ。


こうした言葉はどうみても市民社会の発言としては理性も礼儀をも失った表現として響く。とくに平和や生命の大切さを説くはずの陣営の言葉としては自己否定とも受け取れる。


そんな言葉の暴力について中国出身の評論家の石平氏が産経新聞への寄稿で「日本の『リベラル』すでに死んだ」という一文を書いていた。


1989年の 天安門事件に象徴される中国での民主化運動にも加わった石平氏は「私たちは中国共産党の独裁者たちに対しても『お前は人間じゃない』などという乱暴な言葉 を吐いたことはない」と強調する。そのうえで「こんな言葉の暴力を容認する日本のリベラル派はすでに死んだのか」と疑問を呈するのだ。


意見の異なる相手への言葉の激しさ、鋭さ、険しさ、言論の自由はあっても誹謗の自由というのはないだろう。


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