2015年11月


北朝鮮が悪質プロパガンダで拉致事件終結を画策

日本に向けて頻繁に発せられる「生存者はもういない」

2015.11.30(月) 古森 義久
 
朝鮮労働党70周年の軍事パレード、準備万端か 北朝鮮・平壌


北朝鮮の首都平壌で、道路に並んだ軍事車両(2015年10月10日撮影)。(c)AFP/Ed Jones〔AFPBB News



 安倍晋三首相が政権の最優先課題として掲げてきた北朝鮮による日本人拉致事件の解決は現在どうなっているのか――。


 残念ながら現時点では解決の兆しはみられない。逆にいま最も目立つのは、解決に向けた日本側の努力を放棄させようとする北朝鮮のプロパガンダ攻勢 である。


  日本の一部のメディアや北朝鮮シンパを使って、拉致された日本人はもう生存していないとする「調査結果」を信じさせようと画策しているのだ。


 これに対して、拉致被害者側の「家族会」や「救う会」は調査結果には根拠がないとして強く反発している。

完全に反故にされた1年前の公約

 北朝鮮による日本人拉致事件の再調査は、2014年5月に成立した日朝両国政府間の「ストックホルム合意」に基づいて進められた。


 北朝鮮側はこの合意で、「終戦前後に北朝鮮域内で死亡した日本人の遺骨と墓地」「在留日本人(いわゆる日本人妻)」「拉致被害者と行方不明者」という3つの案件について同時並行で調査することを確約した。


  日本側はこれを受けて経済制裁の一部を解除した。



 残念ながら現時点では解決の兆しはみられない。逆にいま最も目立つのは、解決に向けた日本側の努力を放棄させようとする北朝鮮のプロパガンダ攻勢 である。


  日本の一部のメディアや北朝鮮シンパを使って、拉致された日本人はもう生存していないとする「調査結果」を信じさせようと画策しているのだ。


 これに対して、拉致被害者側の「家族会」や「救う会」は調査結果には根拠がないとして強く反発している。

完全に反故にされた1年前の公約

 北朝鮮による日本人拉致事件の再調査は、2014年5月に成立した日朝両国政府間の「ストックホルム合意」に基づいて進められた。


 北朝鮮側はこの合意で、「終戦前後に北朝鮮域内で死亡した日本人の遺骨と墓地」「在留日本人(いわゆる日本人妻)」「拉致被害者と行方不明者」という3つの案件について同時並行で調査することを確約した。


   日本側はこれを受けて経済制裁の一部を解除した。

  (つづく)


じわじわと尖閣を手に入れようとしている中国

尖閣での日中対立は中国が優位に、米国の政策諮問機関が判定

2015.11.25(水) 古森 義久
中国公船2隻が領海侵入、尖閣沖

東シナ海・尖閣諸島周辺海域を航行する中国海警局の船舶(2013年11月2日撮影、資料写真)。(c)AFP/JAPAN COAST GUARD〔AFPBB News



 尖閣諸島をめぐる日本と中国との対立は、中国が同諸島周辺の海域、空域での軍事、非軍事両面でのプレゼンスをさらに強め、優位に立ちつつある――。


 11月中旬、米国議会の中国関連の政策諮問機関がこんな判断を明らかにした。


 尖閣諸島を中心とする東シナ海において、中国は南シナ海での行動とは対照的に静かな形で影響力の拡大を進め、日本を圧しつつあるというわけだ。日本にとっては、尖閣諸島の領有権に影響する重大な警告だといえよう。

超党派の政策諮問機関が明らかに

 米国議会の超党派の政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」は11月中旬に公表した2015年度の年次報告書のなかで、この判断を明らかにした。


 同委員会は、「米中経済関係が米国の国家安全保障に与える影響」を主体に調査・研究し、その結果を米国政府や議会の対中政策に反映させることを任務として2000年に設置された。以来、一貫して中国の動向を恒常的に測定している。

(つづく)

国際  投稿日:2015/11/22

[古森義久]【NHKがパリのテロで光を当てない部分】

~ISの非人道的殺戮は「歴史」のせい?~


 

古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」

執筆記事プロフィールBlog


フランスの首都パリで11月13日に起きた大量無差別殺戮のテロ事件は日本のニュースメディアでも当然、大々的に報じられている。そんななかで 同20日午後10時から1時間近く放映されたNHKスペシャル『緊急報告 パリ“同時テロ”の波紋』をみて、その特殊なアプローチにいぶかった。


奇妙だと思ったのは第一にはいまフランスだけでなく、国際社会が一致して始めたテロ組織への反撃とその壊滅を目指す努力をほとんど取り上げず、フラ ンス国民が怒るよりも嘆き、和解を求めるという側面にのみ光をあてるという点だった。


第二はテロの原因をもっぱらフランスや西欧での貧富の差や難民、移民 の窮状に帰して、イスラム過激派の危険な教えという領域には近づこうともしない点である。


現実にはフランスはオランド大統領がテロ実行を認めた「イスラム国(IS)」に対する戦争を宣言した。シリアなどのIS占領地域への空爆も強化し た。フランス国内では国家の非常事態を延長する措置もとられた。


一方、国連安全保障理事会はISを「国際の平和と安全に対する地球規模で前例のない脅威」 と断じ、その「テロ行為を撲滅するための努力を倍加する」という決議案を全会一致で採択した。フランスも国連も「ISのテロと戦う」という基本の決意を示 したのだ。


一方、NHKの上記の番組はパリの市民が犠牲者に弔意を表し、嘆き悲しみ、国民の間の和解を祈るというような光景があくまで主体だった。断じてテロと戦うといういまのフランスの国家レベルでの強い姿勢はほとんど伝えられないのだ。


そしてこのNHK番組はもっぱら「テロの温床」にハイライトを当てる。フランスの隣国のベルギーにあるアラブ系、イスラム系の移民の多い地域を取り あげ、「テロを生み出しているのは貧困と高い失業率」だと強調する。さらにテロ実行犯の一部が刑務所でなにかを学んだらしいことを提示して、「刑務所がテ ロリストを生み出す温床」だとも解説する。


だが現実に世界のどこでも貧困や高い失業率に悩む人たちは多いのに、だからといって罪のない民間人を多数、残酷に射殺するという因果関係は立証されてはいない。刑務所に入ったらテロリストになるなどという断定も、まったくバランスを失する理屈だろう。


そしてこのNHKの番組は総括部分では今回のテロ事件の背景の最大要因として「歴史」をあげていた。欧州やフランスの長い歴史のなかでのゆがみや変則が今回のテロ事件を招いたという骨子の結論なのだ。


だがイスラム過激派中の過激派ISの特別に異様な非人道的殺戮行動の連続を単に「歴史」のせいにするのは、あまりにテロ側に寛容であり、偏った見方 だろう。この種の殺戮を否定し、抑止しようとする最大限の努力こそ欧州、さらには全人類の歴史の正史なのだ。今回のISの行動は文明社会、市民社会を根底 から破壊しようとする野蛮な犯罪なのである。


人間の集団が貧困だから、失業率が高いから、あるいは刑務所に入ったからといって、みなこんな残虐行為に走る はずがないではないか。


だがISはイスラムの名の下に今回の犯行に走った。イスラム教徒全体としてはこの種の無差別殺戮は当然、否定し、糾弾する。ISのイスラムの教えが イスラム全体のなかでも異常だということだろう。だがそれでもISはイスラムの組織なのである。そのイスラム要因がなぜテロへと直結するのか。この点の解 説はこのNHK番組にはツユほどもなかった。

フランスに仕掛けられた「戦争」、日本も対策を

パリ同時多発テロの悲劇から世界が学ぶべき4つの教訓

2015.11.16(月) 古森 義久
 
パリ連続襲撃、現場にシリア難民の旅券 「3チームに分かれ襲撃」

パリの連続襲撃事件を受けイタリア・トリノで開かれた集会で、フランス語で「私たちは人間だ」と書かれた紙を掲げる人(2015年11月14日撮影)。(c)AFP/MARCO BERTORELLO〔AFPBB News



 11月13日にフランス・パリで発生した同時多発テロは、米国にも大きな衝撃を与えた。


 熱気を増してきた大統領選挙戦でも、国家安全保障や移民・難民問題が大きな論点となることが必至となった。米国の識者の間では、今回のテロは戦争に等しい軍事作戦として認識すべきだという主張が叫ばれている。


 米国ではパリでのテロを民主主義諸国全体への攻撃とみて、犯行声明を出したイスラム教スンニ派過激組織「IS」(イスラム国)への対策などが官民 で論じられ始めた。オバマ大統領も敏速に声明を出し、「無実の民間人を恐怖に陥れる非道な企てだ」「テロリストに裁きを受けさせ、いかなる組織であれ、追 及する」と宣言した。


 米国での具体的な論議としては、まず欧州連合(EU)内の移動の自由などのあり方に対する再考を促すとともに、国際社会がISなど過激派のテロ活動の情報を収集し共同で対策を講じる方法や枠組みについても、根幹から改善を求める意見が出ている。

世界が学ぶべき4つの教訓

 こうした動きのなかで特に注視されるのは、ブッシュ前政権で国務次官や国連大使を務めた保守派論客のジョン・ボルトン氏が指摘した「4つの教訓」であろう。

(つづく)




政治  投稿日:2015/11/11

[古森義久]【NHKは改憲が嫌い?】~改憲1万人集会vs護憲70人集会~



古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」


執筆記事プロフィールBlog

 11月10日午後6時すぎのNHKテレビの全国ニュースをみていて思わず笑ってしまった。NHKがいかに憲法の改正が嫌いで、護憲が好きかが露骨に示されたからだった。客観性を欠く偏向があふれた「ニュース」の扱いだった。


 このニュースには「改憲派、護憲派それぞれ集会」という見出しがついていた。この見出しから判断すれば、文字通り、改憲、護憲の両派の同じような集会が開かれたことの報道だと思うだろう。ところが大違いだったのだ。


 まず紹介されたのは日本武道館での憲法改正を求める大集会の光景だった。国家基本問題研究所の桜井よしこ氏や自民党、民主党などの代表が共催の形を とり、インド、ベトナムからの代表も加わってのこれまででも最大規模の改憲派集会だった。


 参加人数は主催者側発表で1万1千人、画面には巨大な日本武道館 が1階、2階席からアリーナまで人で満員の状況が映った。武道館の最大収容が1万3千席だというから、発表どおりの膨大な人数であることは一目瞭然だっ た。


 ところが続いてNHKが同じニュースとして報じたのは「今の憲法を守るべきだという立場の人たちが東京都内で集会を開き」という項目だった。その光 景は公立中学校の小さな教室ふうの部屋、しかも窓のないクラスルームのような小部屋に年輩の男女がぱらぱらと座っているシーンだった。


 こんな集いを武道館 を埋め尽くす人数の集会と同じレベルの集会だとして報道するのだ。


 NHKはしかもこの護憲派の集いを「東京都内で集会」というだけで具体的な情報をなにも報じなかった。私が自分の目で見ただけでは参加者は30人ほどだった。だがNHKは「主催者側の発表でおよそ70人」というのだ。


 主催者側発表を信じたとしても、1万1千対70とは並列かつ対等、均等に並べて提示すべき数字だろうか。だれがみてもあまりにかけ離れた数字であ る。であるのにNHKは無理をして護憲派の集会をプレイアップしてみせて、改憲派の大集会と同じふうに扱ったのだ。


 その背後にあるのは明らかに報道上での 護憲派の超優遇である。改憲派への偏見、あるいは差別と呼んでよいだろう。


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