2015年12月



2050年の日本は超一流の大国か、没落の三流国か

「バラ色のシナリオ」実現にはいくつもの改革が必要

2015.12.30(水) 古森 義久
 
東京・渋谷のスクランブル交差点。2050年の日本は世界で尊敬を集める立派な大国になっているだろうか?(写真はイメージ)



 2050年の日本は、総人口が1億5000万、経済成長率が4.5%、高度技術と医療などで世界に冠たる「21世紀の新型超大国」になっている。 日本語と英語のバイリンガル国家であり、安全保障面でも役割を拡大して、米国だけでなくインドやオーストラリアとも同盟関係を結んでいる――。

 日本の35年後をこんなふうに予測した書が11月に米国で発行された。

 日本が、世界が羨み尊敬する立派な大国になるとするバラ色のシナリオである。書籍の筆者がかつて日本叩きで有名だった専門家であるという点も含めて、意外性のある内容に米国で関心が集まりつつある。

かつて「日本異質論」を唱えたプレストウィッツ氏

 米国大手紙のワシントン・ポストは12月18日の書評欄でクライド・プレストウィッツ氏の著書『日本復興』を詳しく紹介した。2015年11月に出版された同書は「いかに日本は自国を再興するのか、そしてなぜそれが米国や世界にとって重要なのか」という副題がついていた。


 著者のプレストウィッツ氏はワシントンのシンクタンク「経済戦略研究所」の創設者で、現在も所長を務める。1980年代のレーガン政権では商務長 官顧問として、自動車や半導体に関する日本との一連の貿易交渉の実務責任者となり、その強硬な交渉ぶりから「タフネゴシエーター」と呼ばれた。
(つづく)

米国人歴史学者の日本批判は学問か政治活動か

慰安婦問題で日本糾弾の主導者は韓国政府とべったり

 


米国の歴史学者の一部が韓国政府と密接に連携して日本を批判し続けている。写真は韓国・ソウルの光化門(写真はイメージ)


 米国の歴史学者の一部が長年にわたり慰安婦問題で日本を糾弾してきたが、その運動を主導する米国人女性学者の韓国政府寄りの政治活動がきわめて顕著となってきた。

 その学者は、慰安婦問題での事実を正す日本側の学者たちからの抗議に正面から答えないまま、安倍晋三首相を獰猛な「ミツアナグマ(蜜穴熊)」にたとえ、「戦争志向だ」と非難する投稿や「日本の竹島や尖閣諸島は日本には帰属しない」と断じる論文を米紙に寄せている。


 こうした“反日・親韓”の政治的言動は、米国での慰安婦問題論議が単なる歴史や人道上の課題ではないことを改めて示しているといってよい。

日本糾弾を繰り返すダデン教授

 2015年3月、米国歴史学会(AHA)の機関誌『歴史展望』(Perspective on History)が、コネチカット大学のアレクシス・ダデン教授ら米国の歴史学者20人による日本外務省への非難声明を掲載した。


  日本外務省は、米国マグ ロウヒル社が作成した高校教科書の慰安婦に関する記述の間違いについて訂正を求めていた。ダデン教授らはその外務省の動きを「不当な検閲」だなどと非難し たのである。

(つづく)


[古森義久]【日本糾弾の米・学者を真っ向から否定】~慰安婦問題で若手学者が~  



 

 古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」

執筆記事プロフィールBlog

アメリカのコネチカット大学のアレクシス・ダデン教授といえば、慰安婦問題で長年、日本を糾弾してきた歴史学者である。

ダデン女史はアメリカ側教科書の慰 安婦問題の誤記に対する日本側の学者たちの抗議をも「不当な検閲」として非難してきた。

ところが同じアメリカ人歴史学者の若手がダデン教授を「日本側をた だののしっているだけだ」と厳しく批判した。


日本の英字新聞ジャパン・タイムズ12月18日付は「アメリカの教科書の擁護者は狭量だ」と題するウィスコンシン大学博士課程の日本歴史学者ジェー ソン・モーガン氏からの投稿を掲載した。まだ30代の若手の同氏は慰安婦問題での日本糾弾の急先鋒ダデン氏がジャパン・タイムズに寄せたコメントを批判し ていた。


同紙の12月11日の記事は「50人の日本の歴史学者が慰安婦問題でマグロウヒル社とアメリカ側学者を攻撃する」という見出しで、日本の山下英次大 阪市立大学名誉教授や小堀桂一郎東大名誉教授ら合計50人の学者が同社発行の教科書の慰安婦問題記述の誤記を「明白な間違い」と抗議したことを報じてい た。


この教科書には「慰安婦は日本軍が強制連行した」とか「20万人の性的奴隷」「慰安婦は天皇の日本軍への贈り物」「日本軍は終戦直後、慰安婦多数を 殺した」という記述があった。いずれも事実とは反する記述だった。日本の外務省がまずマグロウヒル社に抗議すると、ダデン教授らはアメリカ人学者に呼びか け、20人の連名で外務省の抗議を「日本政府によるアメリカの教科書の不当な検閲」とか「言論弾圧」と逆に非難する声明を発表した。


日本側の山下名誉教授らは50人でこのダデン教授らの声明に抗議し、その根拠の明示を求めるとともに、マグロウヒル社の教科書の記述を改めて事実ではないとして批判した。


ジャパン・タイムズはこの日本側の動きを12月11日付で記事にしたのだった。その記事はダデン教授が日本側の批判を「50人のギャングの主張」と してその内容には触れずに否定し、慰安婦を現代のナイジェリアのイスラム系テロ組織「ボコ・ハラム」の女性略奪に重ねて現在の日本側を糾弾するコメントを 載せた。


モーガン氏はこのダデン教授のコメントを「日本側の実績のある学者たちへのののしりであり、アマチュアの政治活動」だと非難して、学者としての良心に欠けると主張した。


日本の慰安婦問題をめぐってはアメリカ側の歴史学者はダデン教授をはじめ大多数が「日本軍が組織的に20万の女性を強制連行した」という朝日新聞と同様の主張を続けていた。


だが最近ではこの主張にも歩調の乱れが出て、モーガン氏のように多数派の従来の見解を正面から否定する若手学者も出てきたわけだ。



.国際  投稿日:2015/12/13

[古森義久]【北朝鮮寄りの中国を非難した韓国】~拉致問題解決の為の国際会議で~


 

古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」

執筆記事プロフィールBlog



   国際的な舞台で韓国代表が堂々と中国政府を批判した――


   日本に対してこのところ無理難題を突きつけ、中国にばかりすり寄っているようにみえる韓国が中国を批判するというのは意外だった。だから韓国もまだまだ捨てたものではないのだと、ほっとした気分にもなった。


   この出来事は12月12日、東京都内で開かれた日本人拉致問題に関する会議で起きた。正式には「日本政府主催国際シンポジウム―拉致問題解決に向け た国際連携」と題する討論会だった。日本政府が主催しての日本国内での拉致問題解決を目指す国際シンポジウムというのは、これが初めてだった。


   会場のイイノホールには500人ほどの参加者が集まった。檀上には日本の拉致被害者「家族会」代表の飯塚茂雄氏を囲むように韓国、タイ、モンゴル、EU(欧州連合)、アメリカなどの政府代表が並ぶ。ほとんどが自国民を北朝鮮に拉致された国の代表ばかりだった。

  

   冒頭で国連の「北朝鮮人権調査委員会」(COI)のマイケル・カービー元委員長と「北朝鮮人権状況特別報告者」のマルズキ・ダルスマン氏がそれぞれビデオで北朝鮮の国家的な拉致活動の非を改めて糾弾し、国連としての追及を進める方針を説明した。


   国連総会第3委員会(人権問題)は11月19日、日本人拉致を含む北朝鮮の人権侵害の案件を国際刑事裁判所(ICC)に付託することを国連安全保障理事会に促す決議案を採択した。日本とEUが主導した決議案で、賛成112、反対19、棄権50で採択された。


   反対した国には北朝鮮のほか中国などが入っていた。この決議案は今月中に国連総会で採択され、同安保理での審議に回される。だが安保理では拒否権を持つ中国がすでにこの決議案には反対したため、安保理ではやはり決議案は通らないとみられる。


   こうした背景の中でこの東京での国際会議12日に演説した韓国政府の人権大使の李政勲氏が「関係各国は単に北朝鮮を非難するだけでなく、北朝鮮の人 権侵犯をICCに付託することに反対する中国などの諸国を強く批判すべきだ」と述べたのだった。


   李大使は5分ほどの短い演説のなかで2度も、「国際社会は 中国を批判すべきだ」と繰り返した。この声明はいまもっぱら中国への接近を図る朴槿恵政権の代表からとしてはきわめて珍しかった。


   なにしろ最近の韓国の朴槿恵政権はもっぱら中国にすり寄っている。日本に対する歴史問題などでは最近の韓国は中国との共闘を組む姿勢をみせ始めた。 だから中韓間の政府レベルで韓国側が中国側を正面から批判することは非常に珍しい。だが李政勲大使はその慣例を破るような形で、中国の国名をはっきりあ げ、流暢な英語で「私たちは中国をも非難し、批判する」と言明したのである。


   会議後、李氏に質問してみると、やはり推測どおり、彼はキャリア外交官ではなく、延世大学の教授が本職で、政府から任命されてこの人権大使のポスト にあるのだと説明してくれた。


   いずれにしてもいまの韓国政府代表が国際的な舞台で中国を明確に非難することは異端だといえる。韓国でも大義や人道主義とい う普遍的な価値観の保持のために、その種の価値観を破ろうとする側への非難は明確に表明するということなのか。いずれにしても好ましい動きとして歓迎した いと痛感したのだった。


少しずつよい方向へ動き出した慰安婦問題

日本にとって事態が好転、その5つの根拠とは

2015.12.9(水) 古森 義久
 
安倍首相と朴大統領が初会談、慰安婦問題の交渉加速で一致

韓国ソウルの大統領府で首脳会談を前に握手をかわす安倍晋三首相(左)と朴槿恵(パク・クネ)大統領(2015年11月2日撮影、資料写真)。(c)AFP/YONHAP〔AFPBB News


 慰安婦問題はいまどうなっているのか――。


 11月の日韓首脳会談で「日韓関係改善の最大の障害物」とされた慰安婦問題はその後、どうなったのか。


   この問題の背後で重要な役割を果たしてきた 米国はどのように認識しているのか。


   私がふだん駐在する米国の首都ワシントンから見る限り、きわめて少しずつではあるが、慰安婦問題は日本側にとって有利 な方向へ動き出している。

   以下では、事態が好転していることの根拠を5点ほど報告したい。

歴史学者たちの抗議声明に反論

 第1は、米国歴史学会(AHA)の機関誌『歴史展望』(Perspective on History)12月号に日本側の学者50人の反論が掲載されたことである。


   『歴史展望』は今年3月号に、米国の歴史学者20人による「日本の歴史家に連帯して」と題する日本外務省への抗議声明を掲載していた。その抗議声明に対する反論である。


 米国側の歴史学者を主導したのは、慰安婦問題で長年日本を糾弾してきたことで知られるコネティカット大学のアレクシス・ダデン教授だった。ダデン教授らは、米マグロウヒル社の高校教科書の慰安婦記述の間違いを正そうとした日本外務省を非難していた。

(つづく)

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