2016年04月



.国際  投稿日:2016/4/24

朝日が書く「報道への圧力」NHKは否定


古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」



朝日新聞はこのところ「日本のニュースメディアは政府の圧力に抑えられている」という主張を熱心に広めている。とくにテレビのニュース関連番組に関しての「政治権力の圧力」を強調するのだ。


ところがNHKの代表的なニュースキャスターがそんな圧力はまったくないと否定した。同キャスターの言葉どおりならば、朝日新聞の描く「メディアへの政治の圧力」は虚構の政治宣伝ということになる。


朝日新聞は4月20日付朝刊から「教えて!ニュースキャスター」というタイトルでの連続インタビューの掲載を始めた。その連載の冒頭には「政治権力の側からテレビへの『注文』が相次いでいる」と書かれていた。そして朝日新聞側の問題提起として以下の記述もあった。


「テレビでは(中略)国谷裕子、岸井成格、古舘伊知郎の3氏が番組を去った。(中略)何らかの圧力や局側の忖度があったのではないかとの疑念も残る。研究者やジャーナリストたちから、政府・与党の動きに対して懸念の声も上がっている」


「テレビの表現の自由は揺らいでいないか。日々のニュースは、萎縮することなく伝えられているのか」


上記のような朝日側の認識に基づいて、この記事に登板したのはNHKの「ニュースウォッチ9」という番組のキャスターの河野憲治氏だった。国際報道体験の長い記者である。


その河野氏は以下のように語ったのだ。


「昨今、国会では『政治的公平性』が話題になっていますが、僕たちの現場で外から圧力を感じたり、萎縮して忖度したりすることはありません。忖度という言葉が独り歩きしている部分もあると感じます」


ちなみに「忖度」というのは「他人の心中をおしはかること」という意味である。だからこの場合は政府や与党の考え方、あるいは野党や他のメディアの考え方を勝手におもんばかって、自分の表現を左右するという自主規制を指すといえよう。


とにかくNHKのニュースの看板キャスターの河野氏は政府や政権からの「圧力」も、政権側の意向に配慮しての「忖度」もないと完全に明言したのだった。朝日新聞が執拗に提起する「政治権力の圧力」を否定したのである。


政府や与党の関係者がニュースメディアの内容について意見を述べることは国民の誰にも認められた表現の自由、言論の自由につながっている。政府や与党の代表が放送法という日本国の法律に違反した場合の措置を語ることも法治国家としてむしろ必要な動きだといえる。


だがこうした言動はニュースメディアに一定の圧力をかけ、報道や論評の内容を変えさせるという強制的な要素がある「圧力」とはまったく異なる。NHKの代表はそんな圧力はまったくないと断言したのだった。


このNHK代表の言葉が日本のメディア界の現実であれば、朝日新聞がしきりに宣伝する「圧力」や「忖度」は虚構の絵図ということになる。しかもきわめて特定の政治意図が露骨な虚構のようなのだ。その意図自体が別種の「圧力」ともいえそうである。


中国は南シナ海を「死の海」にするつもりか

世界の海洋科学者が懸念、サンゴ礁を破壊し魚を殺す埋立工事

2016.4.20(水) 古森 義久

米大統領、南シナ海問題で中国に警告

南シナ海・スプラトリー諸島のジョンソン南礁で中国が進める工事を写した写真。フィリピン外務省提供(撮影日不明)。(c)AFP/DEPARTMENT OF FOREIGN AFFAIRS (DFA) 〔AFPBB News


 4月中旬、米国議会の政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」は、「南シナ海での中国の人工島建設による海洋環境の損害」と題する調査報告書を発 表した。同委員会は報告書で、中国当局によるスプラトリー諸島(南沙諸島)の7カ所の埋め立てがサンゴ礁と漁業資源に重大な被害を与え、国際法にも違反す ると警告している。


 米国はこれまで中国の南シナ海における一方的な膨張に対して、安全保障や軍事、外交の観点から非難してきたが、環境破壊の観点からの批判は珍しい。

各国の海洋科学者が問題視

 米中経済安保調査委員会は、米中経済関係が米国の国家安全保障に与える影響について調査し、米国議会や政府に政策勧告することを主任務としている。その一環として中国の安全保障上の行動と米国への影響を分析する作業も続けてきた。

  今回、同委員会は南シナ海問題について初めて環境保護という見地から言及した。

(つづく)


朝日新聞の「まっとうではない」言論



古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」


朝日新聞が4月13日の朝刊にまたまた偏った社説を掲載した。その見出しは「TBS批判 まっとうな言論活動か」とあった。この情緒的な表現をそのまま借用するならば、朝日新聞の社説こそ、「まっとうではない」言論活動である。


この社説の主題はTBSテレビの偏向報道だった。かねて政治的な偏向が激しいとされるTBSテレビに対して民間有識者による「放送法遵守を求める視聴者の会」(以下、「視聴者の会」と略)という組織が昨年11月26日、公開質問状を発表した。


質問状はTBSテレビの「NEWS23」という報道番組でアンカー(司会役)の岸井成格氏が「メディアも安保法案の廃案に向け声をずっと上げ続ける べきだ」と述べたことに対し、放送法の「政治的公平」や「意見の対立する問題では多くの角度からの論点を」という規定に違反するとして岸井氏の見解を問う 内容だった。この番組全体が自民党や政府の政策には一貫して反対し、賛成意見を紹介しないという偏向をも指摘していた。


だがこの質問状に対し岸井氏は記者会見で質問状を発表した側の人々を「低俗、知性のかけらもない」と誹謗しただけで、肝心の偏向についてはなにも述 べなかった。TBS自体が発表した「回答」も「アンカーがニュースに対して解説、論評をすることは広く受け入れられている」と述べただけで、「視聴者の 会」が指摘する放送法違反部分にはなにも答えなかった。


ちなみに「視聴者の会」の代表は作曲家としては超一流のすぎやまこういち氏、上智大学名誉教授の渡部昇一氏、拓殖大学前総長の渡辺利夫氏、弁護士のケント・ギルバート氏などである。岸井氏から「低俗」とか「知性がない」とののしられるのはいかにも奇異に映る。


だから「視聴者の会」側はTBSや岸井氏が公的な電波使用の権利を与えられる側の責任を果たしていないと判断し、TBSの番組のスポンサーとなって いる企業などへの広告料提供の自粛の呼びかけを語るようになった。その動きを心配したTBSが先週、「スポンサーに圧力をかけるなどと公言していること は、表現の自由、ひいては民主主義に対する重大な挑戦である」とする声明を出した。


その前提としてTBSは「多様な意見を紹介し、権力をチェックするとい う報道機関の使命を認識し、自律的に公平・公正な番組作りをしている」とも述べていた。

朝日新聞の社説はそのTBSの主張を全面的に正しいとして、「視聴者の会」の動きを「まっとうな言論活動とはいえない」と断じていた。その社説には他に以下のような記述もあった。

「安保法のように国民の関心が強い問題について、政権の主張と異なる様々な意見や批判を丁寧に報じるのは当然だ」

「この団体(「視聴者の会」)は、放送法を一方的に解釈して組織的に働きかけようとしている」

「放送局の収入源を揺さぶって報道姿勢を変えさせようというのでは、まっとうな言論活動とはいえない」

「もし自律した放送局が公正な報道と権力監視を続けられなくなれば、被害者は国民だ。『知る権利』を担う重い責務を、メディアは改めて確認したい」

さて朝日新聞のこの社説に決定的に欠けているのは、この問題のすべての原因であるTBSテレビの「報道」が平和安保法制に関して一方的な反対だけを 伝え、しかも番組を牛耳る司会役が「廃案せよ」と主張している偏向への言及である。こんな主張は報道でも論評でもなく、政治主張である。放送法に完全に違 反する。


TBSはこと平和安保法制については「公平・公正な番組作り」をしていなかったのだ。その肝心の論点にTBSも朝日新聞もまったく触れず、なんの 根拠も示さないまま、ただ「公正だ」「公平だ」と述べているだけなのだ。


当事者の岸井氏にいたっては公的な電波での公的な発言の偏向を指摘され、そのことになんの反論もせず、ただその指摘の相手を誹謗中傷する言葉を吐き出すという、それこそ低俗、下品のきわみの言動をみせた。朝日新聞はもちろんそんな言動を結果として支持するのだ。


朝日新聞もTBSも安保法制論議では報道でも評論でも一貫して政府とは反対の主張を打ち出した。政府はいつも国民とは離れたところにある「権力」と して扱う。その理屈には、民主主義の日本では政府は実は国民多数派によって選ばれ、支持されているという基本の無視がある。もちろん政府の政策のすべてが 国民多数派の賛成を得るわけではない。


だが政府が国民の代表である基本は揺らがない。ところが朝日新聞やTBSは政府案であれば、もうそれだけで反対し、その自分の側の一方的な主張がいかにも国民全体の主張であるかのような独善を発揮する。


国民にはメディアの偏向を批判する自由がある。偏向メディアを財政的に支える企業などにもその支援を止めるよう要請する権利も自由も日本国民は有し ているのだ。民主主義社会の基本だともいえよう。その国民の自由を「まっとうではない」と断じる朝日新聞の社説は民主主義否定にもつながる。言論を抑圧す る傲慢な歪みの実例だともいえよう。




中国の脅威に東南アジア諸国が「頼みの綱は日本」

4カ国調査で「日本に好感を抱く」人が80%以上

2016.4.13(水) 古森 義久
中国漁船6隻に退去命令=領海侵犯で-ベトナム

4月7日、ベトナム国境警備隊は領海に侵入した中国漁船6隻に退去を命じた。ベトナム・フーコック島の海軍基地に停泊した沿岸警備隊と軍の艦船(後方、2014年撮影、資料写真)。(c)AFP/HOANG DINH NAM〔AFPBB News



 東南アジアで中国の膨張を抑える中心的存在として日本の安全保障面での活動に今や大きな期待がかかっている──。

 米国の大手研究機関のベトナム系米国人学者がこのほど発表した論文によると、東南アジアにおいて日本の影響力拡大が広く歓迎されるようになってきているという。


 同論文は、そうした日本の影響力拡大を安倍晋三首相による外交政策の成果として高く評価し、中韓両国以外のアジア諸国から安倍外交がきわめて前向きに受けとめられている実態を映し出した。

評価され歓迎されている安倍政権の外交政策

 3月後半、ワシントンの大手シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」のフォン・グエン研究員は、「東南アジアは日本の安倍ドクトリンの旋 律に協調する」と題する論文を発表した。グエン氏はベトナム系米国人の女性学者で、ベトナムをはじめ東南アジア諸国の米国や中国に対する政策などについて 研究を重ねてきた専門家として知られる。


 まずグエン氏は、日本が今「東南アジアで他に比類のないほど高い人気を保っている」と強調し、東南アジア各国の政府や国民から日本が非常に好感をもたれていると説明する。

 その根拠の1つとしてグエン氏が挙げるのが、2015年に東南アジア4カ国を対象として実施した世論調査で「日本に好感を抱く」と述べた人が全体の80%以上だったという結果だ。

(つづく)

アジア・オセアニア政治時事・社会

朝鮮学校への公的補助金は何が問題なのか?

補助金を交付する自治体に政府が再考を促す

2016.4.9(土) 古森 義久

北朝鮮、拉致問題を「国際化している」と日本を非難

北朝鮮の機械工場を視察する金正恩第一書記。朝鮮学校では生徒に金ファミリーへの忠誠を誓わせている(資料写真)〔AFPBB News



 日本各地に存在する朝鮮学校は、北朝鮮当局とのパイプを保ち、金正恩第一書記への忠誠を基礎とする教育を施している。

 日本の自治体がこの朝鮮学校に公的な資金を提供することに対して、北朝鮮当局に家族を拉致された「家族会」(北朝鮮による拉致被害者家族連絡会)、そしてそれを支援する「救う会」(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会)が強く反対している。


 なぜ反対するのか。その答えは、朝鮮学校の教育の内容にあるようだ。

政府が自治体に求めた対応

 朝鮮学校とは、日本国内で在日朝鮮人に朝鮮語で教育を行う民族学校のことである。日本の小、中、高校に相当する教育を行っているとされている。


 年来、論議されてきたこの問題がここに来て再び波紋を広げているのは、3月29日に馳浩・文部科学大臣が「朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意 点について」という通知を出したことが契機となっている。この通知は、その種の補助金を出している全国都道府県の知事あてに出された。


 これまで政府は朝鮮学校への補助金は出さず、その交付にも反対の立場を表明してきた。だが、一部の地方公共団体は法令に基づき、自己の判断と責任において補助金を交付してきた。

(つづく)

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