2016年08月



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米国の大学で中国人留学生の「不正」が蔓延

米国議会に諮問機関が警告、このままでは米国の教育が危ない

2016.8.8(月) 古森 義久
米国の大学で学ぶ中国人留学生が急増。それに伴い「不正」も増えている(写真は本文と関係ありません)

 米国に留学している外国人は今や中国人が圧倒的な多数を占めるが、その中国人留学生の不正行為の増加が米国で問題になっている。


 最近、米国議会の米中関係諮問機関が、中国人留学生の多くが入学や試験の際に不正を働いていることを指摘した。中国人留学生による不正行為の急増は米国の大学教育の質の低下をもたらすと警告している。

米国で学ぶ外国人留学生の3割が中国人

 7月末、米国議会の政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」は中国人の米国留学に関する報告書を発表した。同報告書はまず以下のような事実を報告している。


 2015年に米国内の2年制大学以上の教育機関で学ぶ外国人留学生の総数は約113万人だった。そのうちの31%にあたる約35万人が中国人留学生である。その動向は将来、米中関係全体あるいは米国の対中政策にも大きな影響を与えうる。(つづく)


.国際  投稿日:2016/8/26

米中戦争は起こりうる その1 なぜ戦いが始まるのか



古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」

アメリカと中国は戦争に突入しうる!


こんなショッキングな研究結果がアメリカでも最有力の安全保障研究機関「ランド研究所」から公表された。しかもその米中戦争では日本の動向が枢要の カギとなる、というのだ。こんな衝撃の予測を日本の大手マスコミはまだ報じていない。いまここでその内容を伝えよう。


アメリカの首都ワシントンで取材活動 にあたるジャーナリストとしてこの予測の報道は義務とも思える日本への重要な警鐘だからである。戦争は防ぐためにこそ、その可能性の現実を知っておく必要 があるのだともいえる。


報告書のタイトルは「中国との戦争」と、まさにずばりの表題である。しかも副題には「考えられないことを考える」と記されていた。米中戦争なんて、 と顔をそむける向きにはぜひとも知ってほしい報告書なのである。なぜなら米中戦争という事態はわが日本の存続そのものを左右するからだ。


この報告書はランド研究所がアメリカ陸軍当局から委託されて作成した。膨大なデータを駆使し、最高級の専門家集団の知力と体験をインプットして、調 査、分析、予測に長時間をかけてこの7月末に作成を終えた報告書である。


最終完成品としては約120ページのレポートとなった。こんご2025年までの状 況の予測だった。


さてなぜ米中戦争が起きうるのか。そもそもアメリカも中国も核兵器の保有国ではないか。非核の通常戦力もともに強大な規模を保持する。しかも米中両 国は経済面では相互依存の関係にもある。万が一にも全面戦争となれば、両国にとっての破壊や損失は測りしれない。そんな危険がわかっている両国が戦争をす るはずがないではないか。こんな考えは常識のようにも思える。ところがその「常識」にも穴があるというのだ。


その米中戦争の可能性について報告書は次のように述べていた。


「米中両国は軍事的な対決や衝突につながりうる地域紛争での対立案件を抱えている。そ してそれら地域周辺に両国とも大規模な軍事力を配備している。このため偶発的な衝突や危機が深くなった際には、両国いずれにとっても、攻撃される前に攻撃 に出ることへの動機が強く存在する。現実に両国は陸海空、宇宙、サイバー空間などの広大な領域で戦闘をするのに必要な兵力、技術、工業力、要員を十分に保 有しているのだ。だから米中戦争は大規模で代償の大きい戦闘も含めて、単に『考えられる』というだけでなく、実際の思考が必要な可能性なのだ」


アメリカと中国はまちがいなく対立している。南シナ海での海洋紛争が最大例である。東シナ海の尖閣諸島への中国の威圧的な攻勢もアメリカの立場とは 対立する。さらにさかのぼれば台湾への態度でも米中両国は対立する。これらの対立案件で米中両国がともに、相手国が軍事力までを使って、自国の主張を通す のではないかと警戒する疑心暗鬼は常にあるわけだ。


相手が軍事力を使いそうならば、こちらが先に攻撃してその危険を取り除いてしまおうとう発想もそこに生 まれるわけだ。戦争の原因はまず対立の存在、そして双方の軍事力の存在、さらにその対立を自国に有利に変えようという意図の存在と、こんな要素の積み重ね で起きていくメカニズムなのである。


こうした姿勢や認識はわが日本の常識からすると、非常に物騒にみえる。好戦的にさえひびく危険な発想とも思える。だがアメリカでは戦争を想定しての この種の有事研究は「起こしてはならない」という前提や「どのように防ぐか」という意図の下に常時、なされているのだ。同時に中国の側も国益のためには戦 争をも辞さないという基本思想はいやというほど誇示している。

(その2に続く。全5回。毎日18時配信予定)

.国際  投稿日:2016/8/23

北朝鮮の金正恩体制の中核にヒビか



古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」


 北朝鮮のイギリス駐在公使一家が韓国に亡命した事件はアメリカでも真剣な関心を生み、オバマ政権内外でも、今回のエリート外交官の脱北が現政権を 支えてきた労働党中核の不満や動揺を示すとの観測を強め始めた。ひょっとすると金正恩政権の終わりの始まりか、とも読まれているわけだ。


 ロンドンの北朝鮮大使館のナンバー2で、金正恩政権の対欧州スポークスマンともなっていたテ・ヨンホ駐英公使の亡命はワシントンでも大きな驚きとともに波紋を広げた。


 ワシントンの 大手研究機関の戦略国際問題研究所(CSIS)の朝鮮部長で元国家安全保障会議のアジア部長のビクター・チャ氏は8月17日、「北朝鮮幹部外交官の亡命の意味」と題する報告書を発表した。


  同報告書の骨子は以下のようだった。 


 ・北朝鮮にとってロンドンの駐英大使館はニューヨークの国連代表部と並んで外交面で の最重要拠点であり、とくに駐英大使館は北朝鮮の現在の李洙 墉(リ・スヨン)外相や玄鶴峰(ヒョン・ハクボン)駐英大使が金正恩体制の全世界向けのプロパガンダの発信役として活動してきた舞台である。

 

 ・亡命したテ公使も北朝鮮政府全体でもごく少数の英語がきわめて流暢なエリート外交官でイギリス駐在10年の実績があり、その脱北はこれまでの北 朝鮮外交組織では最高位の外交官の亡命となる。テ氏はこれまでイギリスの公開の場で頻繁に演説や講演をして、欧米メディアの北朝鮮報道を「偏向し不正確」 などと非難する当事者だった。


 ・テ氏は明らかに金政権からの信頼が厚く、これまでも労働党の幹部としても優遇されてきたわけだが、そんな立場の外交官までが亡命する事実はエリート層の間でも政権に対する不満が深まった証拠だといえる。この動きは金正恩政権にとっての深刻な危機を意味する。


  ・テ氏は欧州での北朝鮮亡命者を追跡し、監視する任務とともに政権のための秘密資金の管理にもかかわってきたため、韓国側としては欧州各国の北朝鮮外交公館の脱北者対策や資金調達の実態に関する最新情報を得られることが期待される。


  ・北朝鮮のエリート層ではこんごも亡命の動きが広まるとみられるが、金政権は当然、その阻止のために世界各地の北朝鮮大使館や出稼ぎ労働者、技術者への監視を強めることが予測される。また金政権による北朝鮮国内での一般への抑圧も一段と高まるとみられる。 


  チャ氏の報告書は以上の諸点を指摘して、今回の外交官亡命事件を「北朝鮮外交では最大の失点の一つ」と位置づけ、金政権の重大な危機の始まりの可能性を強調していた。

「中国への対応は日本が決めること」と米専門家

エスカレートする中国の尖閣侵入、米国はどう見ているのか

2016.8.20(土) 古森 義久

政府が公表した尖閣諸島周辺海域で確認された中国公船の概要(出所:外務省ホームページ「尖閣諸島周辺海域における中国公船及び中国漁船の活動状況について」2016年8月18日)



 8月に入って中国の尖閣諸島(沖縄県石垣市)に対する攻勢が一段とエスカレートしている。


 中国はなぜこの時期に、中国海警や民兵組織を大動員して日本の領海や接続水域への侵入を繰り返すのか。目的は何なのか。


 前回(「尖閣に迫る中国、 日本はどう対応すべきか」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47631)に続き、米国海軍大学 中国海洋研究所のピーター・ダットン所長の見解を紹介しよう。

 ダットン氏は中国の海洋戦略研究では全米でも有数の専門家である。元々は米海軍パイロットだったが、その後、法律や安全保障を学び法学博士号を取 得した。中国海洋研究所の研究員となってからは、東アジアの安全保障、特に中国人民解放軍の海洋戦略を中心に研究を重ねてきた。南シナ海や東シナ海での中 国の動向に関する論文の発表も多く、連邦議会の公聴会や民間シンポジウムで証言することも頻繁にある。

(つづく)

尖閣に迫る中国、日本はどう対応すべきか

米専門家が警告、中国の尖閣奪取計画は確実に次の段階へ

2016.8.17(水) 古森 義久


外相抗議後も挑発やまず=中国、「管轄権」行使を誇示-尖閣接続水域に公船10隻

東シナ海の尖閣諸島海域近くを航行する中国公船。海上保安庁提供(8月7日撮影、 資料写真)。(c)AFP/JAPAN COAST GUARD〔AFPBB News

 8月に入ってから、尖閣諸島(沖縄県石垣市)海域で中国による威圧的行動が急速にエスカレートしてきた。

 武装した中国海警の艦艇が頻繁に日本領海に侵入してくる。本来ならば立ち入る際に日本の了解を得るべき尖閣周囲の接続水域にも、十数隻の武装艦艇 が連日のように入ってくる。しかも、数百隻という「中国漁船」を従えている。まさに日本の権益を二重三重に踏みにじる行動である。


 中国のこうした行動は一体何を意味するのか。日本はどう対応すべきなのか。そして、日本の同盟国である米国はどう受け止めているのか。その点についての見解を、中国の海洋戦略について研究している米国の4人の専門家たちにワシントンで質問してみた。


 結論を先に述べるならば、専門家たちは誰もが、中国の今回の動きは単に尖閣奪取にとどまらず、東シナ海全体で覇権を確立する野心的な目標への新たな展開だと口を揃えた。

米国は軍事衝突を抑止する役割を担っている

 今、米国の首都ワシントンはなんとも奇妙な空気の中にある。真夏だから当然暑いし、休暇をとって遠出をしている人たちも多い。人や車はふだんより もずっと少ない。一方で大統領選挙の本選が近づき、目に見えない高揚感が街を包みつつある。選挙キャンペーンはもちろん全米各地に及ぶが、政治の中心地ワ シントンでもさまざまな選挙関連のイベントが開かれている。

(つづく)

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