2016年09月

大物強硬派のトランプ陣営入りで北朝鮮に先制爆撃?


「パリ協定離脱すれば環境に深刻な影響」 科学界がトランプ氏非難

米オハイオ州トレドの選挙集会で演説する共和党大統領候補ドナルド・トランプ氏(2016年9月21日撮影)。(c)AFP/MANDEL NGAN〔AFPBB News


 米国大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏の陣営に、元CIA(中央情報局)長官のジェームズ・ウールジー氏が国家安全保障政策の上級顧問として参加した。

 ウールジー氏といえば、米国歴代政権の安全保障関連の枢要ポストを歴任した“大物”であり、これまで外交や安全保障に関して粗雑な発言の多かったトランプ候補の政策を修正し、改善する役割が期待される。


 しかしウールジー氏は、北朝鮮の核武装を阻止するための拠点爆撃を主張するなど強硬な保守派としても知られ、トランプ陣営の政策をどう変えるかが注目される。

トランプ氏の「国防費削減を中止」の主張に賛同

ジェームズ・ウールジー氏(出所:Wikipedia)

 9月12日、トランプ候補の選挙対策本部はウールジー氏の上級顧問就任を発表した。これまでトランプ陣営では、外交や安全保障の政策立案を支援す るスタッフに著名人や政策実績のある人物はいなかった。そのためウールジー氏の就任は、初めての大物の登場として、ワシントンで一躍注目を集めた。

 ウールジー氏は現在75歳。民主党、共和党両政権で安全保障関連の要職に就いてきた異色の人材である。

(つづく)

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拉致被害者家族が見せた怒り

2016.9.21(水) 古森 義久
「拉致国民大集会」でスピーチをする横田早紀江さん(中央)、「救う会」制作の動画「2016.09.18『最終決戦は続いている!北制裁と国際連携で全員救出実現を!国民大集会』」より

「日本の平和を守ろうと、みんなが口にします。けれども、いまの日本が平和なのでしょうか。北朝鮮に拉致された被害者の日本国民が放置され、しかも生存をかけて戦っている以上、いまの日本は平和ではありません」

 姉のるみ子さんを北朝鮮工作員に拉致された増元照明氏は、9月17日、東京都千代田区の砂防会館別館で開催された「拉致国民大集会」でこう語った。


 拉致国民大集会の正式の名称は「最終決戦は続いている!制裁と国際連携で全員救出実現を!国民大集会」である。「救う会」(北朝鮮に拉致された日 本人を救出するための全国協議会)が主催したこの集会に、安倍晋三首相をはじめ各政党の代表や全国知事会の代表、地方議会の代表、一般支援者など合計 1000人が集まった。

どうして「日本は平和だ」などと言えるのか

 増元るみ子さんが北朝鮮政府の工作員に拉致され、北朝鮮に拘束されたのは1978年8月だった。それから、すでに38年という長い年月が過ぎ去った。

(つづく)

2016年は“新聞が死んだ年”になってしまうのか

「米国新聞協会」が改称、ついに消える「新聞」の文字

2016.9.14(水) 古森 義久

2016年は新聞が天国に旅立った年として記憶されるかもしれない。(写真はイメージ)



 <「新聞って、何だったの?」 これから数十年後、あなたは孫にこんな質問をされるかもしれない>――。

 こんなショッキングな書き出しの記事が「ニューヨーク・タイムズ」(9月5日付)に掲載された。


 その記事はさらに以下のように続いていた。


 <あなたはその孫に2016年9月7日という日付を教えてあげてもよいだろう。この日こそが、私たちがそれまで知っていた米国の新聞が集中治療室を出て、痛み止めだけの末期治療を施され、天国への旅路についた日となったかもしれないからだ>

「新聞」という言葉の意味がなくなってきた

 この記事は、「米国新聞協会」が9月7日をもってその名称を「ニュースメディア連合」に変えることを報じていた。


 米国新聞協会は1887年の創設以来、ニューヨーク・タイムズやウォール・ストリート・ジャーナル、ワシントン・ポストなど世界的に著名な大手新聞から全米各地の中小の地方紙までが加わり、巨大な影響力を誇ってきた。


 ところが米国新聞協会は130年近くの歴史を経て、ついに名称から「新聞」という言葉を外すことになった。この決定はもちろん全米の各メディアに報じられた。

(つづく)

国際  投稿日:2016/9/5

オバマ大統領の孤独の深さ


古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」


バラク・オバマ大統領はいまワシントンで孤独となった――


中国でのG20サミットなどに出席するために任期中の最後のアジア訪問の途についたオバマ大統領は、いまやワシントンで一人ぼっちになってしまったという厳しい論評が発表された。


ワシントン・ポストのコラムニストで民主党系のベテラン・ジャーナリストのファリード・ザカリア氏が9月2日の同紙に寄稿した論文である。オバマ大 統領のこの「孤独」はとくにアジア政策に関してであり、このままだと同大統領はアジア政策でも失敗だったという歴史の酷評を受けかねないというのだ。


オバマ大統領は8月31日、アジア訪問のためにワシントンを離れた。同大統領のアジア訪問は2009年1月に就任してからこれで11回目、同時に最 後のアジア訪問となる。周知のようにオバマ氏は外交面で「アジアへの旋回(ピボット)」を早くから唱え、アジアとのきずな強化に最重点をおくとしてきた。


だがこのザカリア氏の論文は「『アジアへの旋回』に欠かせないのは環太平洋パートナーシップ(TPP) という自由貿易協定のはずだが、ワシントンでそのTPPをプッシュするのはもはやオバマ大統領一人となってしまった」と述べるのだ。そのうえで同論文は TPPはもう民主党の大統領候補のヒラリー・クリントン氏、共和党の大統領候補のドナルド・トランプ氏にそろって反対されるだけでなく、共和党リーダーの 下院議長ポール・ライアン氏や民主党左派のバーニー・サンダース上院議員からも難色を示されるようになったことを指摘していた。


つまりアメリカの国政ではTPPには超党派の反対がぶつけられるようになったというのだ。とくに11月に投票が実施される大統領選挙では民主、共和両党の候補者が足並みをそろえて、TPPに反対である現実はきわめて深刻だという。


ザカリア論文はさらに以下の点を結論として強調していた。

「共和党は移民と貿易という二つの主要政策について核心の信念をすっかり逆転させてしまった。開放から障壁と関税という立場への逆転である」


「オバマ大統領は『アジアへの旋回』によってアメリカの最も深く、最も永続する利益を追求してきた。だがいまや同大統領はその追求ではワシントンでは一人ぼっちになってしまった。ワシントンはいま大衆迎合主義、保護主義、孤立主義の波に洗われているのだ」

つまりTPPの挫折は「アジアへの旋回」策の挫折、さらにはオバマ大統領のアジア政策全体の挫折になるという意味である。すっかり孤独になって、ホ ワイトハウスを去るオバマ大統領は8年前にアメリカ国民の大人気を得て、白馬にまたがる王子のように、首都に乗り込んできたあの英姿とは、なんと変わり果 てたことだろう。

.国際  投稿日:2016/8/26

米中戦争は起こりうる その1 なぜ戦いが始まるのか



古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」

アメリカと中国は戦争に突入しうる!


こんなショッキングな研究結果がアメリカでも最有力の安全保障研究機関「ランド研究所」 から公表された。しかもその米中戦争では日本の動向が枢要のカギとなる、というのだ。こんな衝撃の予測を日本の大手マスコミはまだ報じていない。いまここ でその内容を伝えよう。アメリカの首都ワシントンで取材活動にあたるジャーナリストとしてこの予測の報道は義務とも思える日本への重要な警鐘だからであ る。戦争は防ぐためにこそ、その可能性の現実を知っておく必要があるのだともいえる。


報告書のタイトルは「中国との戦争」と、まさにずばりの表題である。しかも副題には「考えられないことを考える」と記されていた。米中戦争なんて、 と顔をそむける向きにはぜひとも知ってほしい報告書なのである。なぜなら米中戦争という事態はわが日本の存続そのものを左右するからだ。


この報告書はランド研究所がアメリカ陸軍当局から委託されて作成した。膨大なデータを駆使し、最高級の専門家集団の知力と体験をインプットして、調 査、分析、予測に長時間をかけてこの7月末に作成を終えた報告書である。最終完成品としては約120ページのレポートとなった。こんご2025年までの状 況の予測だった。


さてなぜ米中戦争が起きうるのか。そもそもアメリカも中国も核兵器の保有国ではないか。非核の通常戦力もともに強大な規模を保持する。しかも米中両 国は経済面では相互依存の関係にもある。万が一にも全面戦争となれば、両国にとっての破壊や損失は測りしれない。そんな危険がわかっている両国が戦争をす るはずがないではないか。こんな考えは常識のようにも思える。ところがその「常識」にも穴があるというのだ。


その米中戦争の可能性について報告書は次のように述べていた。「米中両国は軍事的な対決や衝突につながりうる地域紛争での対立案件を抱えている。そ してそれら地域周辺に両国とも大規模な軍事力を配備している。

このため偶発的な衝突や危機が深くなった際には、両国いずれにとっても、攻撃される前に攻撃 に出ることへの動機が強く存在する。現実に両国は陸海空、宇宙、サイバー空間などの広大な領域で戦闘をするのに必要な兵力、技術、工業力、要員を十分に保 有しているのだ。だから米中戦争は大規模で代償の大きい戦闘も含めて、単に『考えられる』というだけでなく、実際の思考が必要な可能性なのだ」


アメリカと中国はまちがいなく対立している。南シナ海での海洋紛争が最大例である。東シナ海の尖閣諸島への中国の威圧的な攻勢もアメリカの立場とは 対立する。さらにさかのぼれば台湾への態度でも米中両国は対立する。これらの対立案件で米中両国がともに、相手国が軍事力までを使って、自国の主張を通す のではないかと警戒する疑心暗鬼は常にあるわけだ。相手が軍事力を使いそうならば、こちらが先に攻撃してその危険を取り除いてしまおうとう発想もそこに生 まれるわけだ。戦争の原因はまず対立の存在、そして双方の軍事力の存在、さらにその対立を自国に有利に変えようという意図の存在と、こんな要素の積み重ね で起きていくメカニズムなのである。


こうした姿勢や認識はわが日本の常識からすると、非常に物騒にみえる。好戦的にさえひびく危険な発想とも思える。だがアメリカでは戦争を想定しての この種の有事研究は「起こしてはならない」という前提や「どのように防ぐか」という意図の下に常時、なされているのだ。同時に中国の側も国益のためには戦 争をも辞さないという基本思想はいやというほど誇示している。

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