2016年09月

「米国は旗色を鮮明にせよ」と元米国防総省日本部長

尖閣問題に米国はどう関与するのか

2016.9.2(金) 古森 義久
外相抗議後も挑発やまず=中国、「管轄権」行使を誇示-尖閣接続水域に公船10隻

東シナ海を航行する中国公船。海上保安庁提供(8月7日撮影、 資料写真)。(c)AFP/JAPAN COAST GUARD〔AFPBB News

   前回の記事(「国際社会を味方につけて中国の尖閣奪取を阻止せよ」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47742)では、尖閣諸島(沖縄県石垣市)に対する中国の大規模な攻勢に対して日本はどう対応すべきか、ジョージ・ワシントン大学のロバート・サター教授に尋ねた。

 今回は、日米安全保障や中国の対米戦略に詳しい元米国防総省日本部長のポール・ジアラ氏へのインタビューの模様をお届けする。日本の対応に加えて、日本の同盟国である米国がどう動くべきかをジアラ氏に尋ねた。


 ジアラ氏はハーバード大学を卒業して米海軍に志願し、海軍機パイロットとして主にアジア地域に勤務した。その後、現役の海軍士官のまま国防総省勤 務となり、日本部長を務めた。退官後はワシントンの複数のシンクタンクでアジアの安全保障や日米同盟についての研究を重ね、現在はワシントンの民間のアジ ア安全保障研究機関「Global Strategies & Transformation」の所長を務める。


 インタビューの中でジアラ氏は、民兵“漁船”を多数動員した中国の尖閣諸島への攻勢を「新しいタイプの戦争手段」と呼び、米国が日本支持を明確にする必要性を強調した。ジアラ氏との一問一答の要旨は以下の通りである。

断固とした姿勢を見せないとさらに攻勢をかけてくる

ポール・ジアラ氏


――中国による最近の尖閣諸島周辺での新たな攻勢をどうみますか。


ポール・ジアラ氏(以下、敬称略) 中国海警の武装した艦艇と数百隻もの民兵“漁船”を組み合わせた攻勢は、い かにも最近の中国らしい、挑戦的で好戦的かつ他に類を見ない作戦だと言えます。日本側が対処に困るのも無理のない奇抜で非対称の攻め方でもあります。新し いタイプの戦争手段と呼ぶのが適切でしょう。


 中国の人民解放軍は、対外戦略の一環として、直接的には軍事力を使わない三戦(『世論戦』『心理戦』『法律戦』)を実施していますが、今回の尖閣への攻勢は軍事力と緊密に結びついたユニークな膨張戦法です。


 特に、膨大な数の“漁船”を動員して尖閣周辺の水域を埋め尽くす方法は、日本側を威圧するための大きな効果があるでしょう。漁船の乗組員は、現実 には中国人民解放軍の指揮下にある軽武装した民兵で、尖閣諸島に上陸する能力も備えています。これらを普通の漁船と見なすことは非常に危険です。


――日本としてはどう対応することが適切でしょうか。


ジアラ 軍事、非軍事の両面で中国の攻勢や圧力を押し返すことです。断固として抑止、反撃しようという姿勢が日本側になければ、中国はここぞとばかりにさらに攻勢をかけてくるでしょう。

 もしも実際に中国が軍を動員して尖閣諸島への上陸や占拠を試みた場合、その動きを阻止できる防衛力の整備が必要です。そのためには尖閣付近で海上艦艇、軍用機、ミサイルなどを強化することが不可欠です。

 尖閣諸島周辺で米軍と共同で演習を実行することも大きな効果があるでしょう。ただし尖閣が攻撃を受けた場合、最初は日本が自主的に防衛努力をしなければ、米国の支援は始まらないかもしれません。

日米は尖閣諸島周辺で演習を

――オバマ政権は尖閣問題に対してまるでまったくの第三者のような姿勢を保っています。尖閣諸島が日米安保条約の適用範囲に入ると言明はしています が、「有事には尖閣を守る」とば述べません。そして領有権についてはまったくの中立の立場を取っています。こうした米国の態度をどうみますか。


ジアラ 私はこの尖閣の事態は日米両国にとって共通の課題だと思います。日米同盟そのものへの挑戦でもあるのです。

 オバマ政権は確かに『尖閣諸島の領有権に対して、米国は特定の立場を取らない』と言明しています。つまり中立だということです。

 しかし私は、尖閣事態の重大さを考えると、米国は旗色を鮮明にする時期が来たと思います。日米同盟のためにも、また米国自体の国益のためにも、米 国政府は「尖閣諸島は日本の領土だ」とする立場を明らかにするべきだと考えます。米国のそうした日本支持の表明が中国の侵略的な攻勢を抑止する効果を生む でしょう。


――確かに米軍は尖閣諸島近くの海域、空域には出てきません。その周辺で米軍が演習でもすれば、中国に対する明確かつ強固なメッセージとなりますね。


ジアラ はい、私も米軍には尖閣周辺で演習をするぐらいの積極性があってもよいと思います。現在の状況は深刻であり、日米同盟としての対処が必要なのです。

国際社会を味方につけて中国の尖閣奪取を阻止せよ

ジョージ・ワシントン大学ロバート・サター教授に聞く日本の対抗策

2016.8.31(水) 古森 義久
 


外相抗議後も挑発やまず=中国、「管轄権」行使を誇示-尖閣接続水域に公船10隻

東シナ海を航行する中国公船。海上保安庁提供(8月7日撮影、 資料写真)。(c)AFP/JAPAN COAST GUARD〔AFPBB News


 尖閣諸島(沖縄県石垣市)に対する中国の侵略的な行動が止まらない。日本政府の再三の「断固たる抗議」にもかかわらず、中国海警の武装艦艇や民兵漁船団の日本領海への侵入はエスカレートするばかりだ。


 その間に中国外相は日本を堂々と訪問し、日本政府の抗議も軽く受け流す。このままでは中国が日本固有の領土を実効支配しかねない危険性も浮かび上がってきた。

 中国は何を狙っているのか。日本はどう対抗すべきなのか――。米国の中国研究者として知名度の高いジョージ・ワシントン大学教授、ロバート・サター氏に、尖閣諸島をめぐる最近の状況への見解をワシントンで尋ねてみた。

 サター氏は米国政府の国務省、国家情報会議、中央情報局(CIA)などで中国担当の専門官として30年以上を過ごしてきた。特に中国の対外戦略研究では米国でも有数の権威とされている。サター氏との一問一答は以下の通りである。

日本と中国国内に向けたメッセージ

――中国はここ数週間、尖閣諸島の海域にこれまでにない規模と頻度で攻勢をかけてきています。今回の攻勢の動機をどう見ますか。

ロバート・サター氏

ロバート・サター氏(以下、敬称略) 中国は日本が実効支配している尖閣諸島を自国領だと宣言し、その領有権を 確実に手中に収めることを国家目標としています。この時期に中国海警や、いわゆる“漁船”を前例のない数と頻度で出動させて日本への威圧行動を始めたの は、明らかに中国指導部の新たな決定に基づいています。

 今回の行動の第1の動機は、南シナ海での中国の無法な行動に対して日本が国際的に最も強く抗議していることへの警告です。日本への反発や怒りが大きな動機になっていると思います。

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